2014 Fiscal Year Research-status Report
競技者に対する自律訓練法の継続的介入がストレス反応低減に及ぼす影響に関する研究
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26350762
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Research Institution | Osaka University of Health and Sport Sciences |
Principal Investigator |
菅生 貴之 大阪体育大学, 体育学部, 准教授 (60360731)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自律訓練法 / 競技者 / 慢性的ストレス / コルチゾール / コルチゾール起床時反応 / 精神神経内分泌免疫学 / アスリート |
Outline of Annual Research Achievements |
自律訓練法(Autogenic Training;AT)はいくつかの公式を自己暗示的に唱えてストレス低減効果を得る,自己暗示を用いたリラクセーション技法である(Schultz, 1950ほか).ATは競技者に対するスポーツメンタルトレーニングの主要な技法として,わが国でもよく用いられているリラクセーション技法といえる(長田,1996). 一方我々は,ストレス状態を定量化する指標として従来用いられてきた心理指標(質問紙など)に加え,生体反応の指標である起床時の唾液中コルチゾール濃度を用いて検討を続けてきた.起床直後から30分の唾液中コルチゾール濃度の急激な上昇反応は,起床時コルチゾール反応(Cortisol Awakening Response;CARと略記)と呼ばれ,慢性的なストレス状態を定量化する指標として近年研究報告が急増している. 我々のこれまでの競技者を対象としたCARの比較検討においては,シーズン中では極めて高いが,オフシーズンには大きく反応が減少して,心理的なストレス状態の減少とも強い関連性を示すことが確かめられている(菅生・門岡2012;Sugo & Matsutake, 2013).さらに,シーズン中では週一日の休養しかなく,その休養ではストレス状態が軽減されないことから,ATのようなリラクセーション技法の効果の検討は急務である. 本年度は大学に所属するアスリートのストレス状態の定量化指標としての確定を目指し,CARと心理尺度との関連性を検討した.その結果,高抑うつ群のCARが低抑うつ群よりも高く,抑うつとの関連性が示された.これらの結果から,慢性的ストレス状態の違いを示す指標としてCARが適切に反映しているものと推察された.今後は慢性的ストレス指標としてCARを用い,自律訓練法の介入によって違いが認められるかどうかについて検討していく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主に介入研究において用いる指標の確定を主たる目的としており、概要で述べたとおり、心理学的指標との関連性が認められて指標としての適性が示されたことから、次年度以降の研究のベースが着実に進められたと考えられる。 以前の科学研究費補助金の援助による研究環境の整備により、研究体制はおおむね完成したと考えられる。生化学的データの解析も迅速に行うことが可能となったことから、次年度以降の研究は推進してゆくものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究やデータ処理実施の体制や換気今日は整っている.データの処理に関するアドバイザーとして、研究計画書に記載した研究実施体制に基づき、数名の研究者との連携を確認して,共同研究者として学会発表等で連名とさせていただいている。解析後のデータに関して、迅速にアドバイスを受けることができる体制は整ったと言えるだろう。 次年度は多くの実験を行う予定である。特にATの継続実施の効果について検討を行う予定であり、多くの参加者を募ることとなるため、謝金が発生する。また、30名程度の参加者に対して、10ポイント以上の検体を提出してもらうこととなるため、それらの検体検査費が発生する。また検体検査の実施に必要となる消耗品は定期的に支出することとなる。検体検査においては、手技にある程度熟達した大学院生などに補助していただく必要があり、その際にも謝金が発生する。平成26年度は心理尺度の検討を主たる目的とし,検体検査の件数が想定していたよりも少なかったことから、検体検査費(キット等消耗品、謝金)の支出が少なかったため、次年度に執行する予定である。 さらに次年度においては成果公表として国内2回、海外1回の研究発表を予定しており、これらの旅費、学会大会参加費が発生する。研究成果については、本年度実施するデータをもとに、日本体育学会、日本スポーツ心理学会,および国際学会(FEPSAC,Bern)にて発表の予定である。学会発表を通じて、論文の作成につなげていきたいと考える。また、論文投稿も検討しているため、投稿費用が発生する。
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Causes of Carryover |
本年度は心理指標との適性の検討を行い、次年度に介入研究を行うこととした。心理指標の検討の結果を9月に国際学会において発表し、その後実験方法の検討に入ったが、実験対象者とのスケジューリングから、継続的な介入効果の検討を行うには年度を改めたほうが実施が容易であることが判明し、実験はすべて次年度に実施することとした。 実験の実施に当たっては検体検査、謝金等で多額な費用が見込まれるため、次年度使用が必須であると考えられる。また、成果公表のために国際学会への参加も申し込んでいるために、さらに旅費の支出も考えられる。 以上の理由から次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
理由で述べたとおりであるが、実験計画では数百の検体が採取されると見込まれており、1プレートで80検体までしか分析できない。6万円ほどの検体検査のキットが20キットほどは必要となり、それだけでもかなり高額となる。また参加者の謝金も30名程度に2週間ほどかかわってもらうことから、多くの支出が必要となる。 国際学会はスイスのベルンで行われるFEPSAC(http://www.fepsac2015.ch/)にすでに申し込み済みである。
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Research Products
(3 results)