2014 Fiscal Year Research-status Report
身体性とモラルの関係性-山崎闇斎の教育思想を中心に-
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26350766
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
西脇 満 神戸学院大学, 共通教育センター, 教授 (40461016)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スポーツ哲学 / 身体性 / モラル |
Outline of Annual Research Achievements |
1.崎門学派と江戸時代の武士道 江戸時代中期から後期にかけての時期、山崎闇斎とその弟子たち(崎門学派)が勤皇攘夷思想の形成に及ぼした影響について、武士道という観点から説明を試みた。徳川幕府は武士たちに忠孝の徳目を教え、将軍や大名に忠誠を尽くさせるため、朱子学を官学とした。しかし闇斎は朱子学を人間の内面の奥底のレベルにまで突き詰め、その結果、日本人が忠誠を尽くすべきは幕府ではなく天皇であるとした。この教えは浅見絅斎を通じてさらに深化し、絅斎は忠誠をささげるべき対象は金や権力によって決めるべきでなく、あくまで正当性を根拠とすべきと教えた。その内容は絅斎の主著である『靖献遺言』を通じて幕末の志士たちに広まり、ついには明治維新を実現する原動力となった。天皇に忠誠を尽くす教えを人間の内面から説いた崎門学派のこの教えは、明治時代になっても富国強兵を支える精神的な支柱となったことを論証した。
2.日本朱子学における忠と体育思想-浅見絅斎の忠論を中心に- 浅見絅斎は山崎闇斎の弟子の中でも三傑と呼ばれる高弟だった。絅斎は闇斎の思想を忠実に受け継ぎ、朱子学の中心である仁を人間の心の根本から湧き出る愛したい思いに求め、それが主君に向かった時に忠が実行されうると説いた。そしてその忠の対象は日本人であれば天皇に向かうとしたが、その理由は絅斎によれば天皇こそ日本の正統的な主君であるからで、そのことを主著『靖献遺言』を通じて教えた。絅斎によると、孝は肉親の情であるため誰でも持ち続けられるが、忠は主君に対するものであるため、深く仁を体認する必要がある。そのため日常から講学に励むと同時に、武芸を通じて自らの精神性を清く、また高めることを教えた。ここに絅斎が説いた体育思想が認められる。絅斎が自らの刀に赤心報国と篆刻したことも広く知られているが、ここにも忠の重要性を説いた絅斎の考え方をうかがい知ることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は山崎闇斎、朱子、李退渓、浅見絅斎などの文献の中から「身体性」と関連のある内容を抽出する計画で、浅見絅斎に関してはその主著である「靖献遺言」を中心に検討を行う計画だった。これらの主な著書の中で主要なものはほぼ読破し、とりわけ浅見絅斎については論文として執筆することもできた。ただし身体性についての検討は直接の言及がないこともあり、非常に困難を極めるが、引き続き文献研究を行っていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
計画によると平成27年度は日本人の立ち居振る舞いについて複数の著書を発表している矢田部英正の著書を中心に検討し、筑波大学の佐藤臣彦名誉教授のアドバイスを参考に矢田部氏とディスカッションなども行いながら、日本人の立ち居振る舞いとモラルとの関連性について検討を進める。 課題としては山崎闇斎の思想などとの関連性を、その著書を手掛かりに見出すこと。山崎闇斎や浅見絅斎の思想などとモラル、あるいは身体性との関連性については推測は可能だが、それを実際に闇斎や絅斎の著書の中から関連する内容について検討を続けねばならない。そのため今後も文献研究に引き続き注力する。
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Causes of Carryover |
購入図書の熟読に想定以上の時間がかかり、当初の計画通り書籍の購入を進めることができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度以降は一般図書以外の高価な図書の購入計画は3冊と少なく、また出張も予算の範囲内で十分に可能なため、全体的な計画には支障がない。
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Research Products
(2 results)