2016 Fiscal Year Research-status Report
メディアスポーツによる地域の社会関係の再編過程に関する社会学的実証研究
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26350776
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
橋本 政晴 信州大学, 学術研究院教育学系, 講師 (90350181)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メディアスポーツ / 地域生活 / 顔の見える社会関係 / 半匿名性の社会関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は茨城県鹿嶋市を事例として、1990年代以降におけるプロサッカーチームの地域的展開とメガスポーツイベントとしての2002年日韓W杯鹿島大会の開催が、当該地域で生活を営む地域住民たちが維持してきた地域的な社会関係を、どうのように再編しているのか/再編していないのかを探ることを目的としている。かかるメディアスポーツとは、マスメディアやインターネットによってグローバルな規模で媒介されることを社会的・経済的に所与のものとして開催されるスポーツイベントであることを含意している。 三年目となる平成28年度は、同市T地区の自治会活動を中心とした社会関係の歴史的な変遷過程と、サッカーを通じて新たに形成された社会関係とを関連づけることを通じて、当該地区における錯綜する社会関係の編成過程の内実を明らかにした。1970年代の鹿島開発において「コンビナートの町」へと変貌を余儀なくされた同市のなかでも同地区は、鹿島臨海工業地帯に隣接しているため、コンビナート労働者に対して住居を提供してきた地域である。ゆえに住民人口の半数以上が転入者を占めているにもかかわらず、自治会活動においてはいわゆる旧住民が中心となって活動を展開してきた地区であることから同地区を対象にした。 区長の選出、市議会議員の地区推薦といった政治活動から、環境美化活動や地区運動会といった親睦活動まで、T地区の自治会活動は、居住と世代をベースにした<互いの家族の顔の見える社会関係>として維持されてきた。他方、「サッカーの町」への転換を余儀なくされている現在では、スタジアムに集うことをベースにして、居住・家族・職業などの社会的属性を不問にしたままの<半匿名性の社会関係>として形成されていた。両者は、社会関係として抵触することはなく、メディアスポーツは歴史的に維持されてきた地域生活から遊離したものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の三年目は、①同市T地区における自治会活動を中心として住民たちが維持してきた社会関係と、②「サッカーの町」へと変貌を迫られている現在において、スタジアムで集うことをベースにしつつ、居住・家族・職業といった社会的属性を不問のままにして形成されている社会関係とを関連づけることを通じて、メディアスポーツによる社会関係の再編成過程の内実を明らかにすることを目的としていた。 しかしながら、平成28年度から参画した別の研究プロジェクトに当初の想定以上にエフォートを割くことになり、上記②については、充分な社会調査を実施することが困難であった。そのため本研究課題の期間延長を申請し、期間を四年間へと計画し直すことに至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度に実施した社会調査から、①メディアスポーツを通じたサッカーによる地域活性化の論理を明らかにし、「サッカーの町・カシマ」がどのような社会的装置として当該地域に定位しているのを図式化する。二年目に実施した社会調査をもとに、②同市T地区で維持されてきた社会関係の内実を、同地区の自治会活動を中心にして<互いに家族同士の顔が見える社会関係>として明らかにする。三年目に実施した社会調査をもとに、③スタジアムに集うことをベースにして、居住・家族・職業を不問のままにして形成されている社会関係の内実を<半匿名性の社会関係>として明らかにするために、今年度も引き続き聞き取り調査を実施する。 併せて、メディアスポーツ研究における社会関係論や地域社会学における社会再編論を参照しながら、本研究の学術的な意義を明確化することを通じて、「メディアスポーツと地域の社会関係の再編過程」をめぐる社会学的研究として纏め上げる。
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Causes of Carryover |
平成28年度から参画した別の研究プロジェクトに当初の想定以上にエフォートを割くことになり、本研究課題で平成28年度に計画していた茨城県鹿嶋市での社会調査を充分に実施する期間を確保することが困難となった。このことから、平成29年度に上記の社会調査を実施し、本研究課題を学術的研究として纏め上げることが必要になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次の三つの使用を計画している。①茨城県鹿嶋市で実施する社会調査の旅費。②収集した資料や聞き取り調査のデータを電子化するための備品。③本研究課題の学術的意義を明確にするための文献複写費用。
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