2015 Fiscal Year Research-status Report
新たなスポーツ政策動向と相対する学校運動部活動をめぐる「揺らぎ」の意味
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26350779
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
谷口 勇一 大分大学, 教育福祉科学部, 教授 (50279296)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 部活動 / 総合型地域スポーツクラブ / 協働関係 / 指導主事 / 教育としての部活動 / 地域創造活動としてのスポーツ / 「揺らぎ」(苦悩) |
Outline of Annual Research Achievements |
部活動と総合型クラブの良好かつ生産的な協働関係の構築は進んでいない。本研究活動において見出されたその要因は以下に集約できる。すなわち、①学校(教員)の学校外地域におけるスポーツ動向への無関心、②総合型クラブ活動をはじめとした学校外(地域)人材との関係構築に対する後ろ向きな意識にある教員存在、③部活動の指導に耐えられるだけのスポーツ指導者(人材)を確保できていない総合型クラブ側の経営的な問題、であった(平成26年度調査結果他より)。 部活動と総合型クラブの協働関係構築に向けた動向は、スポーツ基本計画にも示される今日的なスポーツ政策の一部とみなされる。各自治体のスポーツ行政部局においては、そのことの実現に向けた各種施策展開が期待されるところである。その際の鍵人物(キーパーソン)の一人として、「指導主事」の存在は大きな意味を持つことになる。指導主事とは「教員」を基本的立場とする行政職員であり、実際の学校における部活動指導の経験を有し、また、総合型クラブ育成をはじめとした今日的スポーツ政策の施行者でもある。換言すれば、部活動と総合型クラブの協働関係構築の成否は、指導主事の意識と今後の動向にかかっていると言っても過言ではない。 以上の問題関心に鑑み、平成27年度においては、大分県教委、大分市教委、首長部局にスポーツ部局を有する福岡市行政に所属する指導主事8名に対する聴きとり調査を実施した。見出された結論は以下のとおりである。すなわち、いずれの指導主事においても将来的な部活動と総合型クラブ間の協働関係構築には前向きであるものの、現状においては、部活動を取りまく教育の論理と地域創造活動としてのスポーツ振興(総合型クラブ育成)との間で、大いなる苦悩(揺らぎ)が抱かれていることが明らかとなった。「部活動は教員の学習機会でもある」なるコメントは、今後の動向検討において重要なものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度(平成27年度)における研究活動は、平成26年度以前より関心を寄せてきた内容であり、一定の「仮説」が設定された状態で実施された。平成27年度の研究(調査)活動においては、仮説の検証が適切に為された反面、仮説の検証に至るまでには至らない内容も僅かながら存在している。そのことは、対象者への調査内容(ヒアリング内容)ならびにその方法論に問題があったと自覚している。その点については、平成28年度研究活動において適宜補完を試みつつ、継続的な調査活動を行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度においては、平成27年度に実施した指導主事調査活動を一部継続実施する計画である。そのことにより、「教員」ならびに「行政職員」といった二つの立場を有する指導主事の部活動と総合型クラブ間の協働関係構築に向けた意識の深層に迫りたい。 その上で、平成28年度においては、部活動顧問教員を対象とした意識調査(質問紙法)を実施し、今日の学校における部活動存在の意味性ならびに学校外(地域)における総合型クラブをはじめとしたスポーツ動向に対する意識を把握する。 部活動顧問教師を対象とした意識調査は、平成22年度にも実施しており、数年を経過した中で学校(教員)の部活動ならびに総合型クラブに対する各種意識の変容状況を把握することにもなる。 本研究課題においては、教員ならびに指導主事の意識の深層を「教員文化」として理解し、学校における部活動存在の意味性を明らかにしていきたい。何らかの総合型クラブとの協働関係の構築は不可欠な事案であるものの、「生徒が生きる」「教員が活かされる」、そして「学校が活性化する」こととなる部活動のあり方及び学校外(地域)スポー^つ活動との関係性について言及していきたい。
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Causes of Carryover |
購入した物品(ICレコーダー)が予定よりも安価であった為。また、調査予定の1ヵ所に訪問できなかった為。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度においては大規模な調査が実施される予定であり、関係機関(九州内各県教育委員会等)への旅費に充当する計画である。
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Research Products
(3 results)