2016 Fiscal Year Research-status Report
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26350793
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
内田 匡輔 東海大学, 体育学部, 准教授 (00407983)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 授業研究会 / 体育実技 / 共生 / 形成的授業評価 / ユニバーサルデザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究の最終的な目的である「すべての生徒が必要とする保健体育授業のあり方を提案する」ことを達成するため、具体的には協力校で研究授業公開日(2016年9月24日)を設け実践研究を公に発信することができた。この授業公開では、体育、保健の公開を行い、体育実技では、アダプテッド・スポーツの考えに基づいた実践を基本とした。さらに、保健でも、生徒や学校の実態や実情に合わせながら、学習成果を高める工夫を盛り込んだ授業展開を公開することができた。 協力校は、「共生」を理念として掲げていることから、本研究の目的である「特別な支援を必要とする生徒と共に臨む体育授業の実験的な実施と評価」は、本研究授業で、実践例が示され、さらには形成的授業評価でも高い評価を得ることができた。この形成的授業評価は、従来の体育実技授業評価での実践で用いられており、「共生」を理念とした授業実践が、生徒に高く評価されることが明らかになった。 さらには、歩数計や心拍数測定器具を用いた授業実践は、生徒の運動有能観に影響を与えており、特に「身体的有能さの認知」では測定器具を用いた授業実践で高くなることが明らかになった。このことは、何らかの障害や特徴、特性のある生徒に対しても、保健体育授業のユニバーサルデザインを考える上で、客観的な機器を用いた指標を導入することは、インクルーシブ教育の手掛かりとなることが明らかになった。 また、障害者スポーツを教材として行った、体育実技授業では、全員の興味関心が分散し、それぞれに楽しむポイントの異なる授業を行うことができた。この授業においても形成的授業評価は有効であり、アダプテッド・スポーツの考えに基づき行われる学校体育は、教材教具が多く準備されるほど、生徒の運動忌避感を遠ざけ、体育・スポーツへの興味関心を高めることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主たる目的である、「特別な支援を必要とする生徒ととも臨む体育授業の実践的な実施と評価」については、当初の計画以上に実践を進めることができた。さらに、「アダプテッド・スポーツを用いた授業実践と授業評価」についても予定通り実践し、一定の評価を得ることができた。これらの目的については達成したものの、「授業評価」という部分では、形成的授業評価や運動有能感での質問紙調査にとどまり、統括的授業評価を進めることが難しかった。 また授業の様子を撮影し、生徒の行動の特徴や動作を分析し、生徒にフィードバックすることで授業を行うことができた。その際の行動や動作分析は、アセスメントして生徒の特徴を捉え、さらなる授業の充実に資するという意味で有効であり、授業評価には一定の成果があった。この授業実践で活用した、生徒の動作特徴の分析は、アセスメントして現職教員の授業実践に活用することが可能であり、半構造化インタビュー調査からも有効性が確認できた。 しかしながら、本実践での授業評価として、移動速度や距離から客観的な指標を導くことが難しく既存の評価との比較を進めることができなかった。 本研究での授業実践は、特に授業補助に徹する生徒が存在せず、全員が学習者としての役割を担う「真のインクルーシブ体育」の一翼を担うことができたという部分では、当初の計画以上の実践を示したものの、授業評価の客観性という部分では難しい部分が残ったため、おおむね順調であったとまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
東京2020を迎えるにあたり、そのレガシーをどのように後世に残すのかは大きな課題である。本研究での取り組みは、次期学習指導要領でも取り上げられる「パラリンピック教育」の具体的な提案として、汎用性も含め検討を重ねることが重要である。 「真のインクルーシブ体育」の実践は、授業研究だけではなく、地域や自治体も参画したカリキュラムマネジメントが必要であり、一つの学校実践には限界がある。よって今後の研究を進めるためにも、地域や行政が一体となり、学校種にとらわれない授業実践の在り方を模索することが、さらなるアダプテッド・スポーツの可能性を開拓することになると考えている。 また、授業実践にあたり、教員の授業力は大きな要因であった。実践する教員の体育・スポーツ経験やさらには、アダプテッド・スポーツへの理解が授業実践を大きく左右することから、教員養成段階での「アダプテッド体育・スポーツ」に関する学修は喫緊の課題であると同時に、そのようなカリキュラムで学んだ指導者の授業実践が、生徒にとって従来の授業評価指標で同様に評価されるのかという検証を継続することは、重要である。 まとめれば、実験的な授業実践は今後も必要であり、その実践を担う人材の育成は急務である。この授業実践とアダプテッド・スポーツに趣向のある指導者養成が、どうインクルーシブ体育に作用するのかを、今後の研究の中軸とし、進めることを考えている。
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Causes of Carryover |
本補助事業を、より精微に達成するため、報告書作成にあたり、結果のとりまとめに時間が必要となったことが理由である。 この理由発生については、予定していた研究授業日程が、最終年度の3月予定されていたこと、また、車いす(テニス用)を用いた授業研究の実施にむけた、機材の準備に想定外の時間を要したことにある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の使用計画については、主たるものは補助事業のとりまとめに向けた冊子の印刷にかかる費用である。また、冊子作成後の郵送などにかかる費用も一部含まれている。
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Research Products
(3 results)