2014 Fiscal Year Research-status Report
バスケットボールの指導現場における体罰に関する国際比較研究
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26350806
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Research Institution | Hokusho University Junior College |
Principal Investigator |
千葉 直樹 北翔大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (20389662)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 体罰 / バスケットボール / フーコー |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は、研究の初年度ということもあり、スポーツ現場における「体罰」に関する文献研究を中心に研究活動を行った。特に文化人類学者のアーロン・ミラー氏のDiscourses of DisciplineやPirkko MarkulaとRichard PringleのFoucault, Sport and Exerciseの文献購読を行った。こうした先行文献の読解を通して、フランスの哲学者ミシェル・フーコーの生権力という概念が日本スポーツ界における「体罰」問題を説明する上で有効であることがわかった。 フーコーの生権力という概念を理論的枠組みとして、26年度3月に日本バスケットボール協会公認指導者講習会(北海道地区)の参加者を対象に、バスケットボール指導者の「体罰」経験と認識に関する質問紙調査を行った。この指導者講習会は、もっとも低位のコーチ資格講習会ということもあり、回答者の63.6%は指導経験のない者であった。調査結果から、指導経験のない回答者の20~30%程度の者が「平手でたたく」、「ボールなどを投げつける」、「罰として長時間トレーニングやらせる」などという「体罰」を選手時代に経験したことが明らかになった。また2013年に日本体育協会が「スポーツ指導者のための倫理ガイドライン」を策定したことを知っているかという質問に対して、68.8%の者が知らないと回答した。さらに、大阪の高校の体罰事件を受けて、自分の指導方法に変化が見られたかという質問に対して、68.8%の者がほとんど変わらないと回答した。さらに、回答者のチームでは、キャプテンが模範的な行動を求められ、他の選手よりも怒られることが多い傾向が明らかになった。この調査から、ほとんどの受講者が「体罰」に否定的な態度をとっている一方で、日本体育協会のガイドラインの存在を知らず、体罰事件の影響を受けていないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、1)1950年代から1970年までのバスケットボール指導者の体罰に関する歴史社会学的な研究と、3)欧米のスポーツ指導者への体罰に関するインタビュー調査を行う予定であった。しかし、1)の研究に関しては、当初予定したよりも体罰に関する文献や新聞の記事が少なく、研究対象を絞った形での再検討が必要になった。3)については、研究代表者の勤務校での負担が増え、海外での調査を行うことができなかった。翌年度以降に、海外での比較研究を延期することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、6月に国際スポーツ社会学会で前年度に行った研究成果を発表する。また11月~12月にかけて北海道と大阪府の高校のバスケットボール指導者を対象とした「体罰」に関する質問紙調査を行う予定である。さらに27年度2月にアメリカのバスケットボール指導者に対するインタビュー調査を行う予定である。また昨年度十分に行うkとができなかったバスケットボール指導者の体罰に関する歴史社会学的な研究を3月に行う予定である。
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Causes of Carryover |
書籍代が予定額よりも安くなったために、次年度使用額が残りました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
郵送代の一部として使用する予定です。
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