2014 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋エネルギー代謝からみた効果的な低酸素トレーニング法の検証
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26350824
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
本間 俊行 立命館大学, スポーツ健康科学部, 助教 (90392703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜岡 隆文 立命館大学, スポーツ健康科学部, 教授 (70266518)
黒澤 裕子 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 研究員 (90623108)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 低酸素トレーニング / 無酸素性エネルギー供給 / 有酸素性エネルギー供給 / 骨格筋エネルギー代謝 / 運動パフォーマンス / 磁気共鳴分光法 / 近赤外分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、競技現場で実際に行われているトレーニングの代謝特性を明らかにすることを目的として、自転車競技選手を対象に運動強度と持続時間の面から常酸素環境と低酸素環境での運動時の代謝動態の違いについて検討した。近年は、短距離種目の無酸素性エネルギー供給能を高めることを狙った低酸素(高地)トレーニングが行われることが増えているため、実際に自転車競技の短距離選手が行っているトレーニングを模擬した運動時の代謝応答を評価した。 運動は、自転車エルゴメータを用いた70秒間持続できる最大強度での固定負荷運動を、常酸素環境と低酸素環境とで同一の絶対強度で疲労困憊に至るまで行わせた。本研究で用いた70秒間維持できる最大強度は、常酸素環境と低酸素環境とで差はなかった。運動中の呼気ガスパラメータを呼吸代謝測定装置を用いて測定し、さらには血中乳酸濃度を運動終了3分後、5分後、7分後に測定した。 酸素摂取量は、運動開始初期の20秒間においては常酸素環境と低酸素環境とで同様の変化を示したが、それ以降は疲労困憊に至るまで低酸素環境での運動時のほうが低かった(P<0.05)。運動後の血中乳酸濃度は、常酸素環境より低酸素環境で高値を示した(P<0.01)。 以上のことから、約70秒間で疲労困憊に至る強度の運動時においては、低酸素環境でも常酸素環境と同様の運動パフォーマンスを維持できるが、運動開始から20秒以降で常酸素環境よりも低酸素環境では有酸素性エネルギー供給量が小さくなり、その分を無酸素性エネルギー供給量を増加させて運動を行うことが示唆された。したがって、本研究で用いた70秒間維持できる最大強度での固定負荷自転車運動は、低酸素環境においても機械的な仕事を低下させることなく、常酸素環境よりも無酸素性エネルギー供給に対する刺激を大きくする方法として有効であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究において、主に無酸素性エネルギー供給能力を高める目的で実際に競技選手が行っているトレーニングでの運動時の代謝応答を常酸素環境と低酸素環境で調べ、両条件での全身での代謝応答の違いが明らかにできた。平成27年度以降では、平成26年度の研究で行った運動(強度・時間)をベースにトレーニング実験を行い、その効果を検証する。また、トレーニングに対する骨格筋エネルギー代謝の適応を検証するための予備実験も行い、プロトコルも確立できた。したがって、本研究は現時点ではおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成26年度で実施した研究をベースにトレーニング実験を行い、その効果を筋エネルギー代謝と運動パフォーマンスの観点から評価する。トレーニング効果の検証を行うため、トレーニング期間の前後で、磁気共鳴装置内での膝伸展運動を行わせ、リン31-磁気共鳴分光法と近赤外分光法を用いて大腿部の骨格筋エネルギー代謝と筋酸素動態を評価する。運動は、無酸素性エネルギー供給量が最大になるとされる2~3分間で疲労困憊に至る高強度運動と、運動後の筋内クレアチンリン酸濃度の回復速度から筋有酸素能を評価する方法として認められている比較的低強度の運動の2種を予定している。いずれの運動も、これまでの予備実験においてプロトコルは確立されている。また、トレーニングが全身での運動パフォーマンスに及ぼす効果を評価するために、最大酸素摂取量、最大無酸素性パワー、ウィンゲートテストをトレーニング期間の前後で実施する。以上のように、低酸素トレーニングに対する適応について、局所の骨格筋と全身での運動パフォーマンスおよびエネルギー供給能の面から検証を行う。
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Causes of Carryover |
実験に参加した被験者が謝金を不要とされたため、未使用分の被験者謝金を次年度の研究分に移行することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、被験者謝金が当初の計画より多く必要となる見込みである。そのため、被験者謝金の追加分として使用する。
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