2014 Fiscal Year Research-status Report
登山事故を防止するために登山者自身で実行可能な体力評価法とトレーニング法の開発
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26350836
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Research Institution | National Institute of Fitness and Sports in Kanoya |
Principal Investigator |
山本 正嘉 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 教授 (60175669)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 登山 / 事故 / 体力 / 評価 / テスト / トレーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
登山は日本で最も親しまれているスポーツのひとつである。愛好者は老若男女を問わない生涯スポーツといえる。だが過去20年にわたり、登山中の事故が増加の一途をたどっている。最も事故を起こしているのは50代以上の中高年である。申請者らはこれまで、基礎体力(筋力、心肺持久力)の不足がその要因であることを明らかにしてきた。 自己の体力不足を自覚するには体力測定が必要である。だが現在のところ、実用的な方法がない。また、体力評価に基づいた適切なトレーニングを実行できるプログラムの提示も必要である。だがこれについても、経験的なものにとどまっている。 そこで本研究では、①登山者自身で実施できる簡易な体力テストの方法を確立すること、②その結果に基づいて自らトレーニングプログラムを立てて実行できる現実的な方法論を示すこと、の2点を目的とした。本年度はそれぞれについて以下の成果を得た。 ①体力テストの開発:通常の登山道をマイペースの上限で登高し、1時間あたりでどの程度の高度差を上昇できるかという指標により、登山の特異性に合った心肺持久力の体力評価ができることを明らかにした。たとえば、日本アルプスの縦走を体力的に支障なく行うためには、軽装でこのテストを行った場合には、1時間あたり500mの上昇能力が必要である、などである。 ②トレーニング法の開発:下り坂を歩くことで、効率よく脚の筋力を改善するトレーニング方法について検証し、一定の成果を得た。たとえば、本格的な登山を行う前に、5分間程度の下り坂歩行(標高差にして100mあまりの下降)を行うことで、本番時の筋力低下をかなり防止できることなどである。この成果は、中高年登山者に多い、下りでの転倒事故の防止に寄与すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に、体力テストの概要を作成し、研究論文として公表することができた。その結果、代表的な山岳県である長野県の遭難対策関係者からこのテストを採用したいという申し出があり、多数の測定者を得られる見込みも立った。 トレーニング方法の開発についても、登山の特異性にマッチした「下り坂歩行」のトレーニング効果について検証でき、短時間で効果の高い運動であることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
長野県という、最も有名な山岳県の、遭難防止対策を考えている部署(山岳総合センターなど)との連携や信頼関係が確立してきた。このセンターでは現在、新潟、山梨、静岡県の山岳遭難防止関係の部署とも連携を図ることになっている。このため、研究の推進も、今年度からはより全国的に可能になる見込みである。
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Research Products
(11 results)