2014 Fiscal Year Research-status Report
不妊女性の心の不調を探る:多嚢胞性卵巣症候群に関与する心理神経内分泌動態の解明
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26350877
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Research Institution | Shitennoji University |
Principal Investigator |
松本 珠希 四天王寺大学, 教育学部, 教授 (90248047)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 不妊 / 多嚢胞性卵巣症候群 / 月経異常 / 自律神経活動 / 心拍変動 / 基礎体温 / 心理状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、排卵障害を来す主要な不妊原因であり、生殖医療現場において頻繁に遭遇する疾患である。また、PCOS女性では、月経異常や性ホルモン分泌異常に加えて、うつや不安、自尊感情の低下など深刻な心理症状も高い頻度で発症することが報告されているが、PCOSの詳細なメカニズムと心の関与については未だ明らかにされていない。本研究では、多彩な臨床症状を呈するPCOSを、心身相関の指標となる自律神経活動を基軸とした多因子性病態モデルとしてとらえ、心理・神経・内分泌要因の相互関係を探求することを目的としている。 平成26年度は、「PCOS・不妊症予備軍としての月経異常を有する女性の心の不調を探る」をテーマとする基礎研究を実施した。対象者は175名(18~20歳)。平成26年9~11月から平成27年3~5月まで、月経開始と終了をメールにて連絡するように依頼した。また、月経中と月経前の不快症状の種類と程度、妊娠・分娩歴、睡眠時間、運動経験、病歴、服薬、ストレス状態についても調査した。 日本産科婦人科学会の正常月経の定義(月経周期25~38日・変動が6日以内・出血期間が3~7日)を基に、対象者175名を次のように分類した。①正常月経群48名(48名中19名は出血期間が8日以上、18名は周期変動が7日以上認められた周期を有する。)②頻発月経群40名(調査期間の月経周期は全て38日以内だが、24日以下の月経周期が認められた。)③希発月経群37名(調査期間の月経周期は全て25日以上だが、39日以上の月経周期が認められた。)④不整周期群16名(24日以下及び39日以上の月経周期が混在。)⑤疾患群10名(何らかの疾患を有し治療中。)⑥連絡が無いもの24名。 現在、①~④群の女性を対象に、月経周期の規則性、月経中と月経前の不快症状の種類と程度、生活習慣、ストレス状態との関連について比較検討をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請時の予定では、非PCOS群の女性を対象に、月経周期性、月経中と月経前の不快症状の種類と程度、生活習慣、ストレス状態との関連について検討した後、自律神経活動動態も測定する予定であったが、研究参加を希望する女性が175名に上り、月経周期の連絡システムの構築とデータベースの作成に予想以上の時間を要した。しかし、自律神経活動測定装置は完成しており、平成27年度より測定を開始することができる。またPCOS群を対象とした臨床研究は、平成28年度に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、平成26年度に引き続き「PCOS・不妊症予備軍としての月経異常を有する女性の心の不調を探る」をテーマとする基礎研究を実施する。対象者は、平成26年度の研究で、月経周期情報を基に選定された141名(正常月経周期群48名、頻発月経周期群40名、希発月経群37名、不整周期群16名)とする。被験者全員には、自宅にて2ヵ月間、基礎体温、起床時間、就寝時間、身体的・精神的症状の有無と程度を記録してもらう。また、各被験者には卵胞期(月経開始5~11日目)と黄体期(月経開始前2~10日)に実験室に来室してもらい、心電図を25分間測定する。その後、次の5種類の心理テスト(Beck Depression Inventory、State-Trait Anxiety Inventory、Profile of Mood States、General Self-Efficacy Scale、Rosenberg 自尊感情尺度)に回答してもらう。自律神経活動は、得られた心電図から、心拍変動周波数・時間領域解析、ローレンツプロット、1/fゆらぎ解析を用いて自律神経活動動態を評価する。 主な検討課題は、次の5項目である。①月経周期の規則性と初経年齢との関連、②基礎体温の変動と月経周期の規則性との関連、③基礎体温の変動と睡眠時間、睡眠時間帯、身体的・精神的不快症状との関連、④正常月経周期群と月経異常群間の基礎体温の変動、自律神経活動指標、心理指標の比較検討、⑤自律神経活動動態から考察する正常月経周期:妊孕性の指標のみならず心の健康指標ともなるか? 上記の研究プロジェクトに加え、不妊女性の心の不調とPCOS女性の心理・神経・内分泌動態に関連する国内外の文献を検索し、現況をまとめ、総説論文の作成にも着手する。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、「PCOS・不妊症予備軍としての月経異常を有する女性の心の不調を探る」をテーマとする基礎研究を実施した。対象者は175名(18~20歳)で、平成26年9~11月から平成27年3~5月まで、月経開始と終了をメールにて連絡するように依頼した。月経周期の規則性を基に被験者175名のグループ分けをするためには、最低6ヵ月間の月経周期情報が必要となり、平成27年3月までにすべての被験者からのデータが揃わなかった。また、自律神経活動動態を含め、各被験者に対して必要な項目もすべて測定することができなかったため、平成26年度中に謝礼金を渡すことできなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に参加した被験者175名は、平成27年度の研究プロジェクトにも参加する。したがって、次年度使用額675,047円は、被験者と研究補助者への謝礼金にあてる。また、交付申請時の予想を上回る研究参加希望者が発生したため、心理テストや心電図電極等、不足している物品購入のためにも使用する。
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Research Products
(3 results)