2015 Fiscal Year Research-status Report
ロコモティブシンドロームのリスク因子を予測する動的バランス指標の開発
Project/Area Number |
26350887
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤田 和樹 大阪大学, 全学教育推進機構, 准教授 (00361080)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 研 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00283747)
橋詰 謙 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50156270)
島本 英樹 大阪大学, 全学教育推進機構, 准教授 (50299575)
小笠原 一生 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70443249)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ロコモティブシンドローム / 動的バランス / 2ステップテスト / 重心動揺 / 足圧中心 / 移動能力 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本整形外科学会は,ロコモ度評価のためのテストとしてロコモ25,立ち上りテスト,2ステップテスト(2ST)を推奨している.本研究では,平成26年度に大阪府泉佐野市在住の高齢者350名を対象にロコモ度テストを実施した.平成27年度は,これらのデータを用いてロコモの関連要因である関節痛と2STの関連について解析を行った.その結果,2ST値(2歩幅÷身長)が1.30以下群に比べて,1.31-1.40群における関節痛有のオッズ比は有意に低くなり,ロコモ度関連の動的バランス指標として2ST値の有用性が示された.また,1.31-1.40群と1.41以上群のオッズ比はほぼ同じであり,2ST値の適用範囲には限界があることが示唆された. 歩行など着地直後の足圧中心(COP)は短時間に大きく動揺し,時間の経過とともに収束する.高齢者では,2STにおける着地直後のCOPのダイナミックな変化が動的バランスの有用な指標になる可能性は高いと考えられる.そこで,本研究では,床反力計を用いて2ST課題における着地直後(20~200ミリ秒)のCOPの変化を測定し,ロコモの発生予測に有用な動的バランス指標を新規作成することを目的とする.平成26年度には,ロコトレ教室の前後で床反力計を用いた2ST測定を行った.今年度はこれらのデータ解析を行い,2ST値が改善した高齢者では着地直後のCOPの移動速度が増加する傾向を報告した. 平成27年度も,泉佐野市在住の高齢者を対象に前年度と同様のロコトレ教室を市内2ヶ所で行い,その前後で床反力計を用いた2ST測定を行った.平成26年度は,床反力計が1台のため2STの2歩目のデータのみの収集だったが,今年度は,床反力計3台体制により3歩目のデータ収集が可能となった.現在,COPの解析区間を着地後20ミリ秒から3歩目着地まで延長してCOPの移動距離やスピード等を検討中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で示した通り,現在ロコモ度テストとして普及している2ステップテスト(2ST)は,高齢者のロコモ関連の有用な動的バランス指標になり得ることが我々の調査から明らかになった.その一方で,2ST値による従来の評価では動的バランス能力に比較的余力のある高齢者の機能低下を早期に発見することが難しいことも示された. そこで,我々はロコモ関連の新規な動的バランス指標を開発するため2ST課題を利用した床反力テストを開発した.今年度は前年度に行った実験プロトコールを再検討し,2歩目に加え3歩目の床反力データが収集できるシステムを構築した.平成27年6月には,泉佐野市在住の高齢者50名を対象に,床反力計を用いた2ST,膝伸展筋力,10m歩行,TUGTなどから構成される体力テストを実施した.さらに,平成28年1月から3月の間,同市内の2ヶ所で49名の高齢者を対象にロコトレ教室を行い,その前後で上記と同じ内容の体力テストを実施した. 現在,これらの体力テストのデータベースを作成し,ロコモ関連の動的バランス指標について探索作業を進めている.具体的には,2歩目着地直後(20~200ミリ秒)の足圧中心(COP)を求め,その移動距離,前後・左右の最大移動幅,平均速度,ピーク速度およびその出現時刻を解析中である.また,着地時の衝撃力緩衝の程度が運動制御能を反映すると考えられることから,2歩目の衝撃緩衝係数(Fzmax/time/BW)についても解析を行っている.さらに,今年度は,2歩目に加えて3歩目の床反力データを収集することが可能となったため,解析区間を着地後200ミリ秒から3歩目までに延長してCOPの解析を行っている.また,2歩目(または3歩目)の衝撃緩衝係数と2歩目と3歩目間の時間の関連が身体の重心制御能を反映している可能性があることから,これらの変数の比などについても検討を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,泉佐野市在住の高齢者99名を対象に改良を加えた2ST床反力測定を含む体力テストを横断的に実施した.また,この調査と併行して日本整形外科学会推奨のロコモ25を実施し,対象者のロコモティブシンドロームのリスク評価を行った.今後は,これらのデータを利用してロコモティブシンドロームの発症確率の予測が可能な回帰式を作成する.具体的には,ロコモのリスクを従属変数とし,2ST値,立ち上がりテスト,膝伸展筋力,10m歩行,TUGT,開眼片足立ちなどの体力指標,COPの移動距離,前後・左右の最大移動幅,平均速度,ピーク速度,衝撃緩衝係数などの床反力指標を独立変数に投入したロジスティック回帰モデルを作成し,その適合度を検討する.また,独立変数に投入された各指標のリスクの大きさ(オッズ比)を比較検討する.さらに,今年度は同市在住の高齢者49名を対象に行った3ヶ月間のロコトレ介入試験のデータを解析し,トレーニングによる動的バランスの変化を2STにおける床反力指標によって評価することが可能かどうか検証する.このような試みは本研究以外には見られないため,スポーツ医学,応用健康科学分野に与える本研究のインパクトは大きいと考える. 平成28年度は,これらの成果を日本体力医学会,日本臨床スポーツ医学会, 日本公衆衛生学会,10th International Conference on Strength Training等で報告する予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画では,ロコトレ教室に参加する保健師1名と運動指導員2名の謝金として,1万円×10回×3名=30万円を予定していた.しかし,年度途中で研究協力機関である泉佐野市側において上記3名分の謝金が確保されたことにより,上記謝金の支出がなくなり,次年度に繰越金が生じることとなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の使用額は新規請求分を合わせて約41万円である.次年度も,引き続き泉佐野市でデータ収集(体力測定)を行う予定であり,これに要する費用として15万円(謝金8万円,旅費7万円)を見込んでいる.また,次年度は国内学会発表にかかる旅費で10万円(2回分),論文の英文校正料で6万円,国際雑誌の投稿・掲載料で10万円の使用を予定している.
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Research Products
(1 results)