2014 Fiscal Year Research-status Report
無意識な脳活動が行動を制御する機構を利用した新規生活習慣指導法の立案
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26350899
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
吉川 貴仁 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10381998)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 無意識脳 / 脳磁図 / 食刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、無意識レベルの脳活動と生活習慣の関係を脳機能イメージングによって解明することにより、生活習慣病者や肥満者の食習慣・運動習慣に対する新たな生活指導法の作成を目指す。 平成26年度はまず、視覚的な食刺激への脳神経応答を働かせた前後で、無意識的に変化する脳活動(刺激前の準備状態から刺激後の余韻状態の変化)を解明することを目指した。具体的には、若年成人被験者(10名)を対象に、12時間空腹条件で、①3分間、閉眼で課題をしない間の脳活動と、②その後の5分間、開眼で食品写真による視覚刺激を行った際の脳活動、さらに③その後再び3分間、閉眼している間の脳活動を脳磁図計で解析した。また、食品写真の代わりにモザイク写真による刺激を行った際の、上記条件①~③の脳活動も同様に測定した。その結果、食品課題において条件①と③の間で、側頭連合野(ブロードマン37,38野)や前頭極(ブロードマン10)などで有意な脳活動の変化を認めた(海外雑誌投稿準備中)。側頭連合野は各種知覚を統合し認知・把握する役割を果たす脳領域として、また前頭極は行動の計画立案のイニシアチブを取る脳領域として知られており、総合的に考えると、自覚的な食刺激の前後では、食に関する情報処理と食行動へ突き動かす計画が無意識下で自動的に発生するものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究では、視覚的な食刺激を被験者自身が自覚できるような形で与えたときに、その前後で無意識的に変化する脳活動を調べ、刺激前の準備状態から刺激後の余韻状態に至る脳神経システムの時間的・空間的動態を明らかにできた。この結果は、次の段階として、被験者自身が自覚できないような形で視覚的に提示した時に生じる脳神経活動を調べる上で有益な情報となった。よって、本研究は全体として順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降の実験では、食事や運動に関する場面や事物を、被験者自身が自覚できないような形で視覚的に提示したさいの、脳活動を脳磁図計で捉える。特に、1)食事・運動に関してどのような内容の視覚刺激が、どのような無意識レベルの脳神経反応を惹起するのかを詳細に調べる。さらに、2)この脳磁図の結果を、Power of Food Scale(日常の食の意欲の調査)やThree Factor Eating Questionnaire-R21(日常の食行動様式の調査)といった心理質問紙の結果とリンクさせて、普段の摂食に関する心理・行動の傾向と無意識レベルの脳神経活動の惹起がどのように対応するかを検討する。また、3)平成26年度に明らかにした、自覚的に提示された視覚刺激前後での側頭連合野や前頭極などの脳活動との関係にも注目したい(無自覚な形の視覚提示でも、脳に同じような余韻効果は現われるのか?)。 なお、この研究計画は、大阪市立大学大学院医学研究科倫理委員会からはすでに承認を受けている。
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Causes of Carryover |
平成26年度に、予備実験として、自覚的な視覚刺激の前後の無意識的に変化する脳活動を解明する必要があり、その基礎的実験に時間を要したため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度以降に、被験者自身が自覚できないような形で食品を視覚的に提示したさいの脳活動を脳磁図計で検討する予定である。
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