2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26350921
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
石塚 俊晶 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 教授 (30399117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 豪 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 講師 (50649035)
渡辺 康裕 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 名誉教授 (90127324)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経幹細胞 / 神経分化 / 酸化LDL / 酸化LDL受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
高脂肪食で飼育し脂質異常症を呈したマウスやラットでは、海馬歯状回での神経新生が低下していることから、酸化LDLやHDLが神経幹細胞の機能に影響を及ぼしている可能性が考えられる。そこで、昨年度は、まず、マウス人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来の胚様体をレチノイン酸およびノギンで刺激し、神経幹細胞および神経細胞への分化誘導を行った。この時、酸化LDL 1~10 microg/mlを加えると神経幹細胞への分化が有意に抑制されたが、神経幹細胞から神経細胞への分化には影響しなかった。一方、HDL刺激はマウスiPS細胞から神経幹細胞、さらに神経細胞への分化のいずれも影響しなかった。 生体脳における神経幹細胞は、虚血や外傷などの脳損傷時に増殖・分化を行い、神経新生を促進させる。しかし、脳動脈硬化症などによる脳血流低下や炎症反応により、記憶障害などの認知機能低下が誘導されるとの報告がある。それより、酸化LDLやTNFが低酸素環境における神経幹細胞の機能に影響を与えている可能性がある。このため、今年度は、マウスiPS細胞由来神経幹細胞を低酸素環境(5% O2)下で培養し、神経細胞への分化に対する酸化LDLおよびTNFの影響を検討した。その結果、(1) レチノイン酸およびノギンによるマウスiPS細胞から神経幹細胞への分化後、TNF 100 U/mlで刺激すると、通常酸素環境および5% O2環境のいずれも、神経幹細胞から神経細胞への分化を有意に抑制したが、両者の差異はみられなかった。(2) 酸化LDL 1~10 microg/mlの刺激は、5% O2環境下でも、神経幹細胞から神経細胞への分化に影響せず、TNFと同時に刺激しても相加的な効果はみられなかった。以上の結果より、通常酸素環境および低酸素環境のいずれにおいても、TNFが神経幹細胞の分化を抑制する一方、酸化LDLの影響は少ないと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、低酸素環境下におけるマウスiPS細胞から神経幹細胞、さらに神経細胞への分化に対する酸化LDL,HDLおよびTNFの影響を検討した。一方、低酸素環境下での神経幹細胞のノルアドレナリンやセロトニン分泌に対する酸化LDLおよびHDLの影響は、細胞抽出液および細胞培養上清を用いて高速液体クロマトグラフィーにより検討を行っているが、サンプル間のばらつきが著しく未だ一定の傾向が得られていない。さらに、正常マウスの脳から、海馬や側脳室周囲を含む冠状断の組織切片を作成し、低酸素培養下での酸化LDLおよびHDLの影響を、BrdUを用いた神経幹細胞の増殖活性や増殖因子の発現により検討しているが、抗体の特異性の問題があり、こちらも未だ一定の傾向が得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
脂質異常症の動物モデルにおいては、酸化LDLとともにリゾフォスファチジン酸(LPA)と呼ばれる生理活性脂質の産生が亢進し動脈硬化との関連が注目されている。また、LPAのアンタゴニストが、マウス胎生海馬に保護的に作用することが報告されている。そこで、今後は、LPAおよびLPA受容体アンタゴニストが通常環境および低酸素環境下での神経幹細胞の機能に影響しているかを検討する。さらに、虚血障害後の神経新生低下が示唆されるマウス脳梗塞モデルを用いて、梗塞周囲部の神経幹細胞のBrdU活性や神経新生に与えるLPAおよびLPA受容体アンタゴニストの影響を免疫組織染色を用いて、運動機能評価への影響をCorner testなどを用いて評価する。
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Causes of Carryover |
今年度は、正常マウスの脳を単離し、海馬や側脳室周囲を含む冠状断の脳組織切片を作成し、通常酸素環境および低酸素培養下での酸化LDLおよびHDLの影響を、BrdUを用いた神経幹細胞の増殖活性や増殖因子の発現により検討する予定であったが、抗体の特異性の問題により、BrdUや増殖因子の発現がうまく安定的に表出できず、現在、抗体の希釈条件を変更したり他の抗体を使用したりして検討を繰り返している段階である。このため、当初予定していた試薬・消耗品類、マウスの購入・飼育費が未使用であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでの研究により、神経新生や神経分化に対する酸化LDLの影響が低いことが示された。そこで、次年度は、通常酸素および低酸素環境下でのマウスiPS細胞由来神経幹細胞から神経細胞への分化に対するLPAおよびLPA受容体アンタゴニストの影響を追加検討する。また、海馬や側脳室周囲を含む冠状断の脳組織での影響、さらに、マウス脳梗塞モデルにおける梗塞周囲部の神経幹細胞のBrdU活性や神経新生、運動機能に与えるLPAおよびLPA受容体アンタゴニストの影響を免疫組織染色や行動薬理実験などを用いて評価する。このため、前年度未使用であった費用を追加検討に、今年度計画の予算を後半部分に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)