インスリン抵抗性の指標となる新規血中バイオマーカーの探索

2015 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 26350922
• Research Institution: Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology
• Principal Investigator: 藤田 泰典 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30515888)
• Project Period (FY): 2014-04-01 – 2017-03-31
• Keywords: インスリン抵抗性 / バイオマーカー

Outline of Annual Research Achievements

本研究課題では、インスリン抵抗性の指標となる血中バイオマーカーの開発を目指し、細胞・動物モデルを用いてインスリン抵抗性を反映する分泌タンパクを同定し、血中マーカーとしての有用性を検証することを目的としている。パルミチン酸を曝露したC2C12筋芽細胞のRNA-seq解析で同定した分泌タンパクをコードする遺伝子と、ミトコンドリア病の研究から見出したミトコンドリア機能障害や小胞体ストレスを反映する可能性がある分泌タンパクをコードする遺伝子で共通する遺伝子を探索した結果、遺伝子X、遺伝子Y、遺伝子Zを同定した。遺伝子Xおよび遺伝子Yの機能解析を実施するために、C2C12筋芽細胞で遺伝子Xと遺伝子YのsiRNAによるノックダウンを行った。ウエスタンブロット解析の結果、siRNAの導入により遺伝子XでコードされるタンパクXの発現減少が認められた。遺伝子YでコードされるタンパクYについては、現在使用する抗体を検討している。昨年度採取した高脂肪食マウス及び通常食マウスの長指伸筋とヒラメ筋からRNAを抽出した。パルミチン酸を曝露したC2C12筋芽細胞のRNA-seq解析で同定した分泌タンパクをコードする遺伝子と、ミトコンドリア病の研究から見出したミトコンドリア機能障害や小胞体ストレスを反映する可能性がある分泌タンパクをコードする遺伝子の定量RT-PCRを行った結果、ヒラメ筋において遺伝子Zの発現が増加していた。また、長指伸筋およびヒラメ筋において、遺伝子Yおよび遺伝子Xの発現がそれぞれ増加傾向を示した。以上のように、インスリン抵抗性の指標となる新規バイオマーカーの候補遺伝子を同定した。今後、さらに候補遺伝子の探索を行った後、肥満モデルマウスおける血液中タンパクレベルの評価と候補遺伝子の機能解析を実施する予定である。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成27年度は、①インスリン抵抗性細胞モデルで分泌が促進されるタンパクの選抜、②インスリン抵抗性動物モデルの骨格筋・肝臓で発現誘導されるタンパクの選抜、③インスリン抵抗性動物モデルで血清中濃度が増加するタンパクの同定を計画していた。①については、候補タンパクを測定するためのELISAキットの検討を行った。②については、高脂肪食マウスの骨格筋に着目し実験を進め、候補遺伝子を同定することができた。③については、①と同様に、血清中の候補タンパクを測定するためのELISAキットの検討を進めた。さらに、平成28年度に予定していた候補遺伝子の機能解析を前倒しで開始した。これまでに、遺伝子Xのノックダウンを実施した。以上のように、当初想定していたように、候補タンパクに対する有用な抗体、ELISAキットの選抜に苦慮しており、計画から遅れている実験もあるが、前倒しで実施した実験もあることから、総合的にはおおむね順調に進展しているものと考えられる。

Strategy for Future Research Activity

平成28年度は、①候補タンパクX、Y、Zの血中濃度を測定するためにELISAキットの検討を行う。有用なキットを選抜することができれば、高脂肪食マウスなどの動物モデルの血中濃度を測定する。②細胞モデルおよび動物モデルにおける定量RT-PCRを実施し、さらに候補遺伝子の探索を行う。③現在同定している候補遺伝子について機能解析を実施する。具体的に、候補遺伝子のノックダウン、リコンビナントタンパクの細胞への投与などを行い、インスリンシグナル伝達経路への影響を調べる。

Causes of Carryover

平成27年度計画では、高脂肪食マウス血清のELISAを実施する予定であったが実施するに至らなかった。それらの実験に必要な物品の購入を延期したため、次年度使用額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

平成27年度に実施するに至らなかったELISAに必要な物品の購入に使用する予定である。