2014 Fiscal Year Research-status Report
周産期と乳児期初期をつなぐ生後1ヶ月齢児の脳・身体活動から探るヒトの発達の連続性
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26350924
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 はま 東京大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (00512120)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脳機能発達 / 新生児 / 乳児 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「NIRSによる大脳皮質の機能的活動の計測」を中心に実施した。生後1ヶ月齢付近およびその前後の乳児の脳機能発達を明らかにすることを目的とし、新生児~生後3ヶ月の児を対象に、fNIRSを用いた計測を実施した。2014年4月~2015年3月の期間において、延べ107名の計測を実施した。自然睡眠時の脳の自発活動を記録し、血液中に含まれる酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの相対的な時間変化の位相同期の程度を検討した。その結果、生後間もない時期には、両者が同位相の振る舞いを示すのに対して、発達に伴い逆位相の方向に変化することが明らかになった。特に、その変化は出生後の比較的短い期間に急激に生起することが確認された。また、この特性は、受胎後の期間ではなく、出生後の期間に応じて認められるものであったことから、胎内環境から離れることによる様々な環境の変化と強く関係する特性であることが示唆された。28名の児に関しては、複数回のfNIRS計測を実施し、縦断的な変化を検討した。その結果、上記で明らかになった特徴が認められ、横断的・縦断的に結果の安定性が確認できた。また、疾患あるいは疾患のリスクのある児の計測も進めており、それらの児の特徴から、定型発達の特性をより明確にする作業に取り組んだ。本年度に得られた研究成果の一部は、国内で開催された学術集会にて報告し、その内容について議論した。また、次年度以降に予定している「動作解析装置による身体運動の計測」のための予備的な検討・議論をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年を通じてコンスタントに計測を実施し、また解析方法の検討・確立も進めることができた。異なる母集団との比較に関しては、現在進めている最中である。
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Strategy for Future Research Activity |
脳の機能発達に関しては、定型発達を呈する児の計測をさらに進める予定である。特に、生後1ヶ月の時点でのデータを、さらに蓄積し、その前後(新生児期および乳児期)との比較を丁寧におこなう。また、計測部位(チャンネル数)を増やすことにより、より広い範囲の脳の活動の様子について解明する。次年度以降は、当初の予定通り、身体運動特性の解明に取りかかる予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、計測データの蓄積により、より信頼性のある結論を導きだすことに重点を置いた。その結果、データ取得の期間が長くなり、またデータ解析および結果の解釈を丁寧かつ慎重に実施することとなった。従って、当初予定していた学術会議や学術誌での報告を見送ったため、旅費や論文投稿のための支出が予定よりも少なかった。また、現状の計測状況を維持しての計測が必要となったため、当初予定していた装置のメンテナンスは計測の区切りがつくタイミングで実施することとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、本年度に得られた成果を学術集会で報告するとともに、学術誌への投稿を予定している。また、本年度に集中してデータを取得したため、目標数のデータの蓄積ができた。従って、装置のメンテナンスも次年度の早い時期に実施する予定である。
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Research Products
(1 results)