2015 Fiscal Year Research-status Report
幼児教育と小学校教育の接続期に求められる支援の縦断的追究:幼小の段差の克服の過程
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26350926
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
滝口 圭子 金沢大学, 学校教育系, 教授 (60368793)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田爪 宏二 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (20310865)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 幼小接続 / 環境移行 / 発達の連続性 / 学びの連続性 / 家庭との連携 / 幼児教育 / 小学校教育 / 移行支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27(2015)年度の研究の目的は「幼児教育(保育所や幼稚園,認定こども園等での幼児を対象とした教育)と小学校教育との段差を整理し,幼稚園,保育所・園,こども園の年長児,保護者,年長児担任保育者を対象とした初年度の基礎的データを収集する」ことであった。 まず,段差の整理であるが,平成27(2015)年7月から10月にかけて,I県Ko市内保育所・園長,こども園長,小学校長,教頭,小学校1年生担任,中学校長,教頭とともに協議を重ね,小学校1年生が生活に適応していく上では,幼児期に「一生懸命遊ぶ経験」や「遊びを通して友達と協力する経験」を質的にも量的にも十分に蓄積しておくことが重要であるとの共通認識に至った。以上は,小学校1年生担任教諭からの指摘であり,幼児期の学びの適切な内容とその将来的な影響について,幼児教育関係者と小学校教育関係者との認識の齟齬が解消されつつあることがうかがえ,極めて意義深い。 次に,質問紙調査については,I県Ka市内20か所,Ko市内6か所,H市内7か所,総計33か所に調査票を配付し32か所から回収した。保護者1123名,保育者108名から回答を得た。データ分析中であるが,①年長児の小学校入学への意識及び②保護者の小学校入学への意識(「全く楽しみにしていない」~「とても楽しみにしている」5件法)の平均値は,両者とも3.5であった。インタビュー調査は,I県Ko市内計6か所の年長児総計203名を対象に実施した。質問紙調査及びインタビュー調査とも,小学校就学に向けての意識を調べており,就学に関する不安を尋ねる項目も設定された。本調査への回答により不要な不安が生起することを回避するため,調査実施時期を平成28(2016)年2月下旬から3月上旬とした。そうした事情により,現在,データの分析中である点を付記しておく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27(2015)年度の研究計画として,交付申請書には(1) 保幼小連携実践の観察とその展開に関する提案及び(2) 段差の克服に関する質問紙調査及びインタビュー調査の実施という2項目を記載した。(1) 保幼小連携実践の観察とその展開に関する提案については,以下,金沢大学人間社会学域学校教育学類附属幼稚園年長児T組と附属小学校1年A組の連携実践「ふねづくり」について報告する。平成27(2015)年9月1日(火)から9月14日(月)の間の7日間に渡り,年長児と小学校1年生が,実際に自分たちが乗ることができる船の製作に取り組んだ。年長児と小学校1年生が5名程度ずつ配置された5グループが設定され,グループ毎に活動した。最終的に「計画,製作」→「試乗(失敗)」→「再度,製作」→「完成(成功)」という流れの中で実践が行われた。報告者は,数日に渡る実践を開始当初から観察及び分析し,実践の過程において分析結果を実践担当者に報告し,実践の展開に当たっての協議に加わった。平成27(2015)年度は,幼稚園年長児と小学校1年生が同じグループで活動する際に,小学校1年生が抱く葛藤について重点的に分析した。次に,(2) 段差の克服に関する質問紙調査及びインタビュー調査の実施については,科学研究費助成事業平成26(2014)年度実施状況報告書において説明したように,当初計画より1年の遅れが認められるものの,当初計画より広域での調査が可能となるという利点も踏まえ,平成27(2015)年度に幼稚園,保育所・園,こども園の年長児,保護者,年長児担任保育者を対象とした質問紙調査及びインタビュー調査を実施した。平成26(2014)年度に変更も踏まえた報告した研究計画通りに進んでおり,本研究課題は概ね順調に進展していると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28(2016)年度は,平成26(2014)年度及び平成27(2015)年度の成果を踏まえつつ,(1)保幼小連携実践の観察と幼小接続における実践の意義の提案を行い,(2)幼小接続期の具体的支援に関する質問紙及びインタビュー調査の実施に取り組む。(1)保幼小連携実践の観察と幼小接続における実践の意義の提案については,引き続き,金沢大学附属学校園,京都教育大学附属学校園,I県Ko市内の保幼小連携実践を観察し,分析する。平成27(2015)年度は,特に,金沢大学附属学校園及びI県Ko市内の保幼小連携実践をより詳細に分析し,両者の比較を踏まえながら,幼小連携実践の意義と幼小連携実践の継続可能なあり方について提案したいと考えている。また,平成26(2014)年度,平成27(2015)年度に続き,日本教育心理学会,日本発達心理学会,日本保育学会等の関連学会において,研究発表(ポスター発表,口頭発表)に加え,自主企画シンポジウムやラウンドテーブルを企画運営し,研究の成果を公表する。次に,(2)幼小接続期の具体的支援に関する質問紙及びインタビュー調査の実施については,平成27(2015)年度に調査を依頼した年長児及びその保護者を対象に,平成28(2016)年度(小学校1年生),平成29(2017)年度(小学校2年生)に渡り,縦断的に調査を実施する予定である。質問紙調査は小学生保護者及び小学校担任教諭を対象に,インタビュー調査は小学生を対象に実施する。平成28(2016)年度(小学校1年生),平成29(2017)年度(小学校2年生)までを視野に入れた縦断調査の実施については,調査を依頼したI県Ka市,Ko市,H市の行政担当者に依頼をしており,既に了解を得ている自治体もあるが,詳細については今後協議する予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画段階では,質問紙調査を実施する調査対象園として,研究代表者が在住する石川県内及び研究分担者が在住する京都府内について10か所ずつ計20か所程度を想定していたが,諸事情により京都府内での調査が困難となった。一方で,石川県内についてはより広域での調査が可能となり,平成27(2015)年度は,金沢市20か所,小松市6か所,白山市7か所計33か所で調査を実施した。以上のように,調査対象園の変更に伴い使用計画にも変更が求められ,計画的な予算の執行が困難になったことが,次年度使用額が生じた理由として挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28(2016)年度に実施する調査では,平成27(2015)年度の調査対象者を継続して追跡することになっており,調査対象者はほぼ確定していると考えてよい。そのため,平成27(2015)年度のような調査計画の変更,調査対象の変更はないものと推測される。よって,年度当初からの計画的な予算の執行が可能となり,次年度使用額が生じることは避けられると考えている。
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Research Products
(20 results)