2015 Fiscal Year Research-status Report
19世紀末-戦間期ヨーロッパにおける子どもの権利思想・制度史に関する基礎的研究
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26350940
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
塚本 智宏 東海大学, 札幌教養教育センター, 教授 (20183866)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ジュネーヴ宣言 / 児童保護 / コルチャック |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年9月11日から9月24日、今年度の主たる研究計画であったポーランドワルシャワでの資料調査並びに研究懇談を行った。本研究のテーマ「19世紀末-戦間期ヨーロッパにおける子どもの権利思想・制度史に関する基礎的研究」に関する資料調査をポーランド国立図書館を中心に行い、当時の国内外の子どもの権利思想主張の歴史的背景に関する基本資料を入手した。 ①第一次世界大戦とポーランド独立を前後する時期に刊行された欧米各国の児童保護に関する総括的な研究書、②民間の児童保護団体活動に関する諸資料、特に1928年の子どもの権利啓発活動文献、③この②と密接に関連するポーランドの1924年ジュネーヴ宣言受容や各種児童問題・児童保護状況、また関連国際動向を示す当時の児童保護雑誌記事である。 またこの間行ったワルシャワ大学W.タイス教授とコルチャック研究所のチェシェルスカ所長との研究懇談では、特に、当時のコルチャックの権利思想とロシアのヴェンツェリの思想との関係についてドイツの研究者が関心を持っているとの情報を得る一方、さらにポーランドの過去と現代の子どもの権利擁護のつながり、また、互いの国の子ども権利擁護の現状や制度(ポーランドでは子どもの権利擁護庁)についての情報交換や研究交流も極めて意義深いものであった。 本年度は、上記の国外資料調査と研究懇談を研究の主たる課題に据えたが、同時に次年度のジュネーヴ調査に向けて、基本的な研究論文や研究文献による研究課題の整理と資料収集のためのウェッブ上での基礎作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、国際的な児童保護・子どもの権利の歴史関係資料の発掘とこれに基づく19世紀から戦間期に至るヨーロッパの子どもの権利思想並びに1924年のジュネーヴ子どもの権利宣言に代表される国際的な児童保護・権利擁護の活動や理念また制度の形成過程を、子どもの歴史的実態とともに解明することを目的としてしている。 三年間の研究計画では、各年度において、ロシア、ポーランド、スイスで順に調査・研究を進めていく計画であったが、1.まず上記の目的に対応したロシアに関する研究はほぼ完了しすでに学会報告し論文として発表する予定である。ポーランドについては、3スイス調査を経て、ジュネーヴ宣言成立史との関係で再考察する必要に迫られている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.初年度のロシア・ヴェンツェリの子どもの権利思想形成を中心とする調査、2.次年度コルチャックの思想の背景あるいは欧米との関係を調査したポーランドにおける児童保護問題と子どもの権利宣言の動向の研究、これら先行する調査研究と併せて 3.基礎作業を開始したエグランティン・ジェフ研究またジュネーヴ宣言成立史研究によって、三者を関連づける資料また歴史的な論理が少しずつ見え始めている。最終年度のジュネーヴでの調査によって三者がさらに直接にまた間接に結び付く諸資料の発掘に努力したい。
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Causes of Carryover |
当初計画していた航空運賃よりかなり安く、また、比較的長期の滞在予定のために前々年度に生じた「次年度使用額」を加算計画したが、最終的には本計画年度のワルシャワでの滞在費がこれも比較的安価に抑えられることになり、そのまま残る形となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度滞在予定のスイスの滞在費等が高価であり、2週間程度の滞在を予定しているが 基本的にそこでの高価分に加算して計画したい。
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