2015 Fiscal Year Research-status Report
高脂肪食摂取が腸疾患に与える影響における腸内細菌と腸内代謝物の関与の検証
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26350960
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西海 信 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20514706)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | メタボロミクス / 腸疾患 / 高脂肪食 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高脂肪食摂取が腸管腫瘍や炎症性腸疾患に及ぼす影響の原因となる腸内細菌由来代謝物をメタボロミクスにより同定し、その作用機序を明らかにすることを目的とした。平成27年度は、高脂肪食摂取による腸内環境の変化が腸管腫瘍の増悪に寄与している原因を検証する前段階として、APCmin/+マウスのメタボローム解析を、液体クロマトグラフ質量分析を用いて実施し、代謝経路解析を実施した。APCmin/+マウスは、小腸と大腸に腸管腫瘍(ポリープ)が発生することが知られており、特に、小腸で多くの腸管腫瘍(ポリープ)が観察される。そこで、小腸ポリープと大腸ポリープの代謝経路解析の比較を行った。その結果、同じ腸管ポリープであっても、その代謝経路の変動は大きく異なり、特に、アミノ酸代謝は全く異なるということが明らかとなった。この結果は、平成28年度に実施予定の高脂肪食摂取による腸内環境の変化が腸管腫瘍の増悪に寄与している原因を検証する実験に対して有用な研究成果である。 また、炎症性腸疾患モデルであるIL-10遺伝子欠損マウスに、脂肪のベースが異なる高脂肪食(植物性油脂由来、あるいは、動物性油脂由来)を長期摂取させ、高脂肪食摂取が炎症性腸疾患に及ぼす影響について検討した。餌中成分の分析では、植物性油脂由来高脂肪食と動物性油脂由来高脂肪食は、それぞれに含まれる脂肪酸プロファイルが全く異なることが明らかとなり、植物性油脂由来高脂肪食の方が、多価不飽和脂肪酸、n-6不飽和脂肪酸が多く、その一方で、飽和脂肪酸が少なかった。このような脂質成分の異なる高脂肪食の摂取実験を、現在も進めており、動物性油脂由来高脂肪食摂取が、植物性油脂由来高脂肪食摂取と比較して、IL-10遺伝子欠損マウスの大腸組織におけるIL17の発現量を増加させるなどといった結果が得られてきており、脂肪源の違いが腸炎の発症に影響を与える可能性を明らかにできつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高脂肪食摂取が疾患に与える影響についての評価が進んでおり、また、APCmin/+マウスを用いたメタボロミクス研究で、学会発表や論文発表も実施できたことから、おおむね順調に研究が進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通りに高脂肪食摂取動物実験等を進めていき、ヒトへの応用ということを十分に考慮に入れて、腸疾患の発症に寄与する腸内環境はどのようなものなのかということを明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
マウスへの高脂肪食摂取実験は、長期間実施する必要があり、一部のマウスに関して、平成27年度の餌の摂取が開始したものの、その飼育が平成28年度にわたってしまった。そのため、そのマウス検体の分析が平成28年度となってしまったため、その分析のために必要となる予算が平成28年度へと繰り越された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由の欄に記載した分に関して、平成27年度の餌の摂取が開始し、平成28年度にそのマウスの処置を行った得られたマウス検体の分析に、繰り越された予算を使用する。また、新たに平成28年度に配分された予算を使用して、高脂肪食摂取が腸管腫瘍や炎症性腸疾患に及ぼす影響を明らかにするための検証実験を進めていく。
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Research Products
(6 results)