2015 Fiscal Year Research-status Report
脂質生合成を制御するビタミンD3誘導体の機能解析と創薬への応用展開
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26350972
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡邉 瑞貴 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (20507173)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ビタミンD / 脂質代謝 / SREBP / SCAP |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内の脂質代謝機構において転写調節因子SREBP(Sterol regulatory element-binding protein)は中心的な役割を担っており、その活性化・異常はいわゆる生活習慣病と深く関わっている。SREBP活性化を制御できる小分子は生活習慣病に対する新たな医薬の開発につながる。SREBP活性化に関わる新規物質の探索を目的に、約280種の内因性脂質化合物を新たにスクリーニングした。その結果、細胞内でSREBPの活性化を濃度依存的に阻害する複数の内因性ビタミンD誘導体を見出した。この内因性ビタミンD誘導体のSREBP活性化阻害機構について、ケミカルバイオロジー研究を駆使して解析した。今回見出したビタミンD誘導体のSREBP活性化阻害作用は、ビタミンD受容体を介していないことが分かった。また、既知の内因性SREBP活性化調節物質であるコレステロール類とは異なる機構を介していることも分かった。コレステロールはSREBPを小胞体へ留まらせることでその活性化を阻害しているのに対して、ビタミンD誘導体は、SREBPのパートナータンパク質であるSCAPのレベルを低下させることでSREBPを不安定化させ、その活性化を阻害していることを明らかにした。ビタミンD誘導体の血漿中濃度と生活習慣病の病態レベルは疫学的に逆相関することが知られている。実際にビタミンD錠剤は生活習慣病リスクを減少させるサプリメントとして欧米では広く使用されている。しかし、その分子レベルでのメカニズムは未解明のままである。今回の研究成果は、これまで不明であったビタミンDの脂質代謝に対する分子機構を明らかにするものになるかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回見出したビタミンD誘導体のSREBP活性化阻害作用は、ビタミンD受容体を介していないこと、また、既知の内因性SREBP活性化調節物質であるコレステロール類とは異なる機構を介していることを明らかにできた。コレステロールはSREBPを小胞体へ留まらせることでその活性化を阻害しているのに対して、ビタミンD誘導体は、SREBPのパートナータンパク質であるSCAPの分解を誘導し、そのレベルを低下させる。パートナータンパク質を失ったSREBPは不安定化され、その結果、SREBPの活性化が阻害される。さらに、化学合成したビタミンD誘導体光反応性プローブを合成した。合成したプローブを用いて、ケミカルバイオロジー的手法により、ビタミンD誘導体がSCAPに直接的に作用し得ることを見出した。これらの成果を学術論文としてまとめ、国際的な学術誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を踏まえ、ビタミンD誘導体の新たな標的タンパク質の同定を試みる。さらに、創薬開発につながりうる、ビタミンD受容体に作用せずにSREBPの活性化を強力に抑制する合成ビタミンD誘導体の開発にすでに取り掛かっており、この開発研究を推進していく。合成したビタミンD誘導体の細胞内での活性、および、代謝安定性などを評価し、順次、生物モデルを用いたin vivo試験へと展開していく予定である。
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Causes of Carryover |
研究が順調に推移したことや、計算ミスにより少額の誤差が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
分子生物学的な実験に必要な各種消耗品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)