2015 Fiscal Year Research-status Report
ナノチューブ内マイクロ環境を利用した分子進化工学の高度化に関する研究
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26350978
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
久保 泰 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 創薬分子プロファイリング研究センター, 副研究センター長 (10178030)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 試験管内進化 / マイクロ環境 / リフォールディング / 生理活性ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
試験管内分子進化(in vitro evolution, IVE)技術は、標的分子特異的認識能を有する分子を創製するための有効な手段で、バイオマーカー検出用の分子プローブ作製やイメージングツール、抗体医薬に代替するバイオ創薬などに広く活用できる。我々は、生物進化の過程で保存されてきたある種の生理活性ペプチドの分子骨格がランダムな配列を空間提示するのに都合がよいことを見出し、それを鋳型とするランダムペプチドライブラリからの効率の良いIVE技術を確立した(Nucleic Acid Res, 2009; Molecular Brain, 2011; Anal. Biochem, 2011; Toxicon, 2012 他)。鋳型となる分子骨格は、disulfide (S-S)結合やβ構造などによりコンパクトで堅牢な構造を持つ。そのため、これらの構造を如何に天然に近い形で効率よく再現するかが、ペプチドIVE法の鍵となる。本研究提案では、有機ナノチューブが変性タンパク質のリフォールディングを促進し活性タンパク質を再生するのに極めて有用であるという最近の知見(ACS Nano, 2012)に基づき、IVEのプロセスに有機ナノチューブのミクロ環境を利用したより安定で収率の高いペプチドリフォールディングを達成し、IVEの高度化・汎用化を目指した。研究のプロセスは次の3段階からなる。(1)多様な有機ナノチューブゲルの調製、(2)IVE法で用いるペプチドライブラリ構築において鋳型となる生理活性ペプチドの分子骨格の決定、(3)(1)および(2)の組合せにおいて反応液中で適切なリフォールディングが行われる至適条件を探究。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ランダムペプチドライブラリは、IVEのプロセスで始発材料となる。そのため、ランダム配列を空間提示するための分子骨格の選択とランダム部分での偏りの少ない質の高いライブラリの構築は極めて重要である。今年度は、4種類の異なる分子骨格を有するランダムペプチドライブラリを構築した。ライブラリの鋳型とした生理活性ペプチドは、(a) -conotoxin(イモガイ由来)、(b) クモ毒由来でT-type Caチャネルブロッカーとして同定したICK (inhibitor cystine knot)モチーフを有するGTx1-15、(c) Kunitz型のタンパク質加水分解酵素阻害剤であるBPTI (Bovine Pancreatic Trypsin Inhibitor)、(d) 蛇毒由来の神経毒であるスリーフィンガー型ペプチドのMicTx3の4種類である。これらは、アミノ酸残基数、S-S結合数、立体構造が異なる。このアミノ酸配列の中で進化速度が速くvariationの豊富な領域を選んでランダム配列 (NNS or NNB) を組み込んだcDNA libraryを構築した。cDNA libraryより転写反応によりmRNAを合成し、puromycinを含むリンカーをmRNAと結合した。これを無細胞タンパク質合成系においてタンパク質合成を行うと同時にpuromycinのC末端への取込みによるmRNA-peptideの連結を達成する。ここでは、昨年度の成果に基づき特定の有機ナノチューブ共存下でタンパク質合成を行うことにより個々の生理活性を発揮し得るライブラリの構築を行った。これを用いて腫瘍マーカーやリガンド依存性イオンチャネル(LGIC)の細胞外領域を標的として設定した試験管内分子進化を行い、現在までに標的認識活性を有する候補ペプチドを複数同定することができた。標的分子との結合活性および細胞を用いた生理活性の確認が進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在取得している標的分子を特異的に認識する可能性の高い複数のペプチドについては、先ず標的分子結合活性計測を行い、また標的分子を発現した細胞を用いて当該ペプチドの生理活性について解析する。有効なペプチドが得られたら、適切な研究チームとの連携を通じて、その縮小化あるいは分子計算とシミュレーションによる中低分子モデル化を目指す。 有機ナノチューブの利用方法については、尚改良の可能性は残されていると考えている。無細胞タンパク質合成系での有機ナノチューブの併用については、更に化学組成や形状・反応条件についてシステマティックに検討を続けたい。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Pr-SNTX, a short-chain three-finger toxin from Papuan pigmy mulga snake, is an antagonist of muscle-type nicotinic acetylcholine receptor (alpha2 beta delta epsilon)2016
Author(s)
Yamauchi, Y., Kimoto, H., Yang, X., Filkin, S., Utkin, Y., Kubo, T., & Inagaki, H.
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Journal Title
Biosci. Biotech. and Biochem
Volume: 80
Pages: 158-161
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] Realtime single molecular motion analysis of nicotinic acetylcholine receptor alpha 7 by diffracted X-ray tracking method2016
Author(s)
Kubo, T., Baba, T., Ikezaki, K., Sekiguchi, H., Nishino, Y., Miyazawa, A., Sasaki, Y.C.
Organizer
60th Annual Meeting of Biophysical Society
Place of Presentation
ロサンゼルス(米国)
Year and Date
2016-02-29
Int'l Joint Research
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