2015 Fiscal Year Research-status Report
異時的選択行動における衝動性と自己制御を形成する報酬強化の神経機構
Project/Area Number |
26350986
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
地村 弘二 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (80431766)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 意思決定 / 衝動性 / 前頭前野 / 線条体 |
Outline of Annual Research Achievements |
衝動性に関わる脳機構は,報酬の獲得・消費時に顕著に現れるという予想に基づき,ヒトが数十秒遅延する液体報酬を直接消費している際の脳活動を解析した. 行動実験で推定された遅延割引の大きさと,報酬消費中の脳活動の相関を調べたところ,衝動的な被験者において前頭前野の活動が大きくなっていることが観察された.前頭前野頭極部と腹側線条体の機能回路の構造を心理生理交互作用により調べたところ,前頭前野からは腹側線条体前部,および腹側線条体の前部と後部間につよい機能的結合が観察された.さらに腹側線条体の後部から前部への機能的結合は,より衝動的な被験者で強くなっていることが観察された. この神経機構の一般性と信頼性を確かめるために,Human Connectome Projectにより提供されている大サンプル(N=491)のデータ解析を行った.ギャンブル行動課題で報酬を獲得しているときには,線条体の脳活動が大きくなっていることが確かめられた.そして,金銭報酬の遅延割引と,報酬獲得時の脳活動の相関を調べたところ,前頭前野頭極部で顕著な相関が見られた.すなわち,衝動的な被験者ほど,前頭前野の活動が大きかった.また,この前頭前野領域は,液体報酬消費時の相関解析で同定された領域と解剖学的な配置が相同である. これらの結果は,報酬に対する衝動性に関連する前頭前野・線条体の機能回路機構を示している.また,同定された回路機構は,信頼性が高く,報酬の種類や行動課題に独立で,報酬消費一般に関連していることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液体報酬を直接消費している際の前頭前野・線条体の機構を同定し,一般性と信頼性の検討ができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
当該分野で最近新たに指摘された統計的問題を解決し,再解析を行って結果の信頼性の検討を行なう.そのうえで,学会発表を行い,論文を執筆し,投稿する.
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Causes of Carryover |
大規模な解析に必要だった計算リソースを既存の設備で間に合わせることができたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データ量がさらに大きくなることが予想されるため,ディスクシステム,コンピューティングサーバを購入し,計算環境を増強する.また,データ収集を引き続き行い,MRIスキャナ使用料と被験者謝金に使用する.さらに,学会発表を行うための旅費に使用する.
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