2014 Fiscal Year Research-status Report
自然なかたちでインタラクションする二者の神経基盤を階層的システム構造として捉える
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26350987
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田邊 宏樹 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (20414021)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 認知神経科学 / コミュニケーション / 社会性 / 相互作用 / 機能的MRI |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、申請者がこれまで行ってきた視線を用いた共同注意課題を、言葉でおこなう課題に改変した機能的MRI実験を実施した。機能的MRIの従来の撮像法では、発話の際の頭部の動きが画像のアーチファクトとなり統計解析に耐えうる画像を取得することが困難であったが、数年前にミネソタ大学で開発された新しいエコープラナーイメージング(EPI)の撮像シークエンス、いわゆるマルチバンドシークエンスを適応することでこの障害の克服を試みた。マルチバンドシークエンスは、従来のシークエンスで2.5~3秒程かかっていた3x3x3mm解像度の全脳の撮像時間を0.5~1秒ほどに短縮できる。これを間欠撮像(例:0.5秒撮像2秒空白)として使用することにより、発話による頭部の動きの影響をできるだけ除いた撮像が原理的には可能となるため、まずこの撮像法を用いてお互いが発話をしながらの機能的MRI実験が可能かどうかを検証した。視線に関しては従来の撮像法と新しい撮像法の2種類を試すことが出来るため、新しい撮像法でも脳活動がきちんと捉えられるかどうかの検証もおこなった。検証の結果、マルチバンドシークエンスで頭部の動きが解析に耐えうるものであり、かつ従来と同じ繰り返し時間(TR = 2.5s)で2秒間の空白時間を作ることが出来ることが確認できた。そこでこのシークエンスを使用した言葉による共同注意課題を作成し実施した。この実験の結果は平成27年度の海外および日本の学会で発表の予定である。同様に脳波による同様の枠組み、すなわち二人同時計測の視線・共同注意実験をおこなうため、まずはどのくらいのノイズの混入があるのか、その除去方法も含めての検討と、課題に関してもMRI同様の実験が組めるかどうかについての検討を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ハイパースキャニングによる機能的MRIの共同注意実験は、予備実験などに手間取ってしまい、本実験に入るのが遅くなってしまった。その関係で、取得したデータの解析についても遅れが生じた。また、この研究は被験者二人を同時に扱う必要があるため、一人でおこなうことが難しく、実験者や装置のスケジューリングも上手く行かない部分があったことも実験の実施が遅れてしまった要因の1つである。脳波実験については、機能的MRI実験を優先させたため、その遅れに加え、脳波の同時計測実験は申請者が所属する名古屋大学での実施のため、特に人員不足による影響も大きかった。 しかしながら、ハイパースキャン機能的MRIを用いた言語キューによる共同注意実験は、マルチバンドシークエンスの使用可能性も検討でき、本実験も行うことができた。この結果はH27年度のOHBM2014年次総会(国際学会)ならびに第38回神経科学学会で発表することが決まっており、現在論文投稿に向けて準備をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度の計画では、実験者が視線あるいは発話のタイミングを完全に制御できる実験デザインを用いて実験をおこなったが、H27年度からは、まず視線や発話のタイミングを少しずつ緩和し被験者の自由になる部分を増やす実験パラダイムを順次作成しながら、いかに脳機能イメージングデータとして解析可能でありながら自然なやりとりに近い状態をMRI内で実現できるか、その限界を探っていく。これと同時並行で、これまでの共同注意研究の中で明らかとなった始発的共同注意、応答的共同注意、ならびに見つめ合い等の社会的相互作用の神経メカニズムについて、これらの神経基盤がどのくらい狭義の共同注意特異的なものか、すなわち現実の視線や空間にどれくらい張り付いたものなのかについて検討を進める。より具体的には、H26年度におこなった言語キューによる共同注意実験パラダイムをさらに推し進め、具体的な空間における注意の共有でなく、より抽象化された、共通の概念における注意の共有場面において、どのくらい狭義の共同注意と神経基盤が同じか異なるかについて、新たなハイパースキャンイング実験計画を作成し、本年度に実施したいと考えている。 脳波実験については、今年度申請者の研究室に大学院生が入り人員が増えたため、まずは昨年度出来なかった共同注意に関する実験をできるだけ早く行う予定である。その上で、可能であれば機能的MRI実験と平行して脳波実験においても機能的MRIハイパースキャン実験で用いられた課題を順次脳波実験場面で行えるよう改変し、実験を遂行できればと考えている。
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Causes of Carryover |
二個体同時計測脳波実験の本実験に入ることが出来なかったため、準備していた被験者謝金も支払いがなくなり、また予定していた解析も延期になってしまった。したがって被験者謝金並びにこの脳波解析のために購入を考えていたソフトウェアの購入も先送りとなった。また、機能的MRIの解析のために予定していたパーソナルコンピュータの購入に関しても、それが必要となる二個体を1つのシステムとして考える解析がまだ計画段階であり、購入を先送りすることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
先に述べたように、次年度使用が生じた理由が実験の遅延によるものである。達成度のところでも述べたように、平成27年度は申請者の研究室に大学院生が入学したこともあり、申請者の所属する名古屋大学にて脳波の二人同時計測実験をおこなえる目処がついた。そのため、平成26年度の実験および解析のために準備していた謝金および解析のためのソフトウェア購入を平成27年度に使用したいと考えている。但しソフトウェアは当初予定していたものと異なるもの(より安価で代替がきくもの)を購入する予定である。さらに平成27年度は、平成26年度におこなった機能的MRI実験で得られたデータを、単なる脳活動解析だけでなく、二人の脳活動データを1つの動的システムとして捉える解析法を協力研究者と協同して開発する予定である。そのため、平成26年度に予定していたパーソナルコンピュータに関しても平成27年度に購入する予定である。
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Research Products
(4 results)