2015 Fiscal Year Research-status Report
自然なかたちでインタラクションする二者の神経基盤を階層的システム構造として捉える
Project/Area Number |
26350987
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田邊 宏樹 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (20414021)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 認知神経科学 / コミュニケーション / 社会性 / 相互作用 / 機能的MRI |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、昨年度の研究の推進方策にしたがって、これまでの共同注意研究の中で明らかとなった始発的共同注意、応答的共同注意、ならびに見つめ合い等の社会的相互作用の神経メカニズムについて、これらの神経基盤がどのくらい共同注意特異的なものか、すなわち現実の視線や空間にどれくらい張り付いたものなのかについて検討を進めた。より具体的には、H26年度におこなった言語キューによる共同注意実験パラダイムをさらに推し進め、具体的な空間における注意の共有でなく、特徴への注意の共有場面において、どのくらい狭義の共同注意と神経基盤が同じか異なるかについての実験をおこなった。機能的MRIハイパースキャニングの手法を用いて合計で22組(44名)の被験者を対象に、言語キューを用いた特徴への共同注意と空間への共同注意課題遂行中の二人の脳活動を同時に計測し、両課題に共通してみられる脳活動部位として両側の下前頭回、前部島、上側頭回、視床の一部、補足運動前野、前帯状回、内側前頭前野を同定した。また特徴次元課題遂行中には両側の後頭極視床の一部、前帯状回、さらに左下前頭回の活動が、一方空間への共同注意課題遂行中には両側の前頭および補足眼野、外側後頭葉、舌状回、楔部の活動が見られることを確認した。今回の実験では言語キューという共通の入力であったため、上側頭回などの活動が共通部位として同定されたと考えられる。以前から我々がおこなっている視線キューを使った実験結果と付き合わせて考えると、上記共通活動部位の中でも特に下前頭回と前部島が共同注意遂行に極めて重要な役割を果たしているのではないかと考えられる。これらの成果は国内外の学会で発表予定であり、現在論文を作成中である。H26年度におこなった言語キューによる共同注意のMRI実験については国内外の学会で発表し、こちらも現在論文を作成中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ハイパースキャニングによる機能的MRIの特徴次元の共同注意実験は、実験パラダイムおよび実験刺激の策定に手間取ってしまい、本実験に入るのが遅くなってしまった。そのため、取得したデータの解析についても遅れが生じた。MRIハイパースキャニングによる研究は、被験者二人を同時に扱う必要があるため一人でおこなうことが難しく、さらに実験者やMRI装置のスケジューリング調整に難航したことが実験の実施が遅れてしまった要因の1つである。脳波の同時計測実験については、申請者が所属する名古屋大学での実施のため、特に人員不足による影響が大きく、予備実験にとどまることになってしまった。 しかしながら、ハイパースキャン機能的MRIを用いた特徴次元の共同注意実験は、本実験を実施し解析をおこない、この成果はH28年度のOHBM2016年次総会(国際学会)、第31回国際心理学会議/第80回日本心理学会等で発表することが決まっており、現在論文投稿に向けて準備をしている。さらに前年度におこなった言語キューによる共同注意の機能的MRI実験についても、鋭意現在論文作成中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
H27年度には視線あるいは発話タイミングを少しずつ緩和しながら被験者の自由になる部分を増やしての実験パラダイムを作成し、MRIハイパースキャニングの手法を用いてデータを取る予定であった。しかしながら、我々がこれまでおこなってきた共同注意研究のなかでずっと問題になっていた、コアな共同注意の神経メカニズムの同定を優先させるべきと考え、その実験を先にすることにした。このことは昨年度の研究の推進方策に書いたことであり、その意味では予定通りの研究実施である。H28年度は最終年度となるため、これまでの結果を踏まえ、当科研費の研究テーマであるより自然なかたちでインタラクションする二者の神経システムの一端を解明できるような実験デザインを策定し、実験をおこなう予定である。ここで、今まで我々は、実験デザイン上の時間的制約を緩めることがより自然なかたちのインタラクションになるというふうに考えてきたが、自然なインタラクションはそれのみではないことに気づいた。H27年度におこなった特徴と空間それぞれに注意を向ける共同注意課題では、特徴次元または空間位置の選択は完全に被験者に任されており、その後の一連のやりとりも二者の簡単な会話により成立するものであった。そこに実験者は一切介入しておらず、その意味でこれまでの実験より一歩自然なかたちに近づいている。予備実験により実際に時間制約をなくした課題設計はかなり難しいことも分かってきたため、H28年度も引き続き上記の方向での可能性を追求し、そこに注力したいと考えている。二人の脳活動データを1つの動的システムとして捉える解析法についても、現在協力研究者と協同して開発中である。また、脳波についても最終年度ということもあるので、二者関係をみることのできるような脳波ハイパースキャニング実験を実施する予定である。
|
Causes of Carryover |
一番大きな原因は、二個体同時計測脳波実験の本実験に入ることが出来なかったため、準備していた被験者謝金も支払いがなくなり、また予定していた解析も延期になってしまったことである。したがって被験者謝金並びにこの脳波解析のためのソフトウェアの購入、解析のために予定していたパーソナルコンピュータの購入を先送りすることとした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
先に述べたように、次年度使用が生じた理由が実験の遅延によるものである。今後の研究の推進方策のところでも述べたように、平成28年度は脳波の二人同時計測実験をおこなう予定ため、平成27年度の実験および解析のために準備していた謝金および解析のためのソフトウェアならびにパーソナルコンピュータの購入を平成28年度に使用したいと考えている。また平成28年度に行う予定のMRI実験についても、被験者謝金を支払うことになっている。さらに平成28年度は最終年度ということもあり、学会等の成果発表にも積極的に取り組みタイト考えており、そのための旅費等に使用する予定である。現在国際誌に投稿準備中の論文の英文校正にも使用する。
|
Research Products
(11 results)
-
[Journal Article] Neural substrates of shared attention as a social memory: A hyperscanning functional magnetic resonance imaging study.2016
Author(s)
Koike T*, Tanabe HC*, Okazaki S, Nakagawa E, Sasaki AT, Shimada K, Sugawara SK, Takahashi HK, Yoshihara K, Bosch-Bayard J, Sadato N
-
Journal Title
NeuroImage
Volume: 125
Pages: 401-412
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-