2014 Fiscal Year Research-status Report
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26350996
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
稲瀬 正彦 近畿大学, 医学部, 教授 (80249961)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 時間認知 / 大脳皮質 / 大脳基底核 / 神経細胞活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、外界の認知や行動制御に不可欠な、時間情報処理に関わる神経基盤を、大脳皮質と大脳基底核との機能連関であると仮定し、神経細胞活動レベルで解明することを目的としている。特に、未だ解明の進んでいない、時間の計測過程に関わる神経機構の解明を目指している。この目的のため、視覚刺激の呈示時間を三分類する課題を開発して、同課題を遂行中のサルの前頭連合野と線条体から神経細胞活動を同時記録し、課題関連活動を解析する予定である。 本年度は、まず視覚刺激の呈示時間を三分類する課題の制御システムを整備した。課題遂行のため、サルの眼前に、視覚刺激呈示用のモニターと、左・中・右と中央下に押しボタンを計4個配置したパネルを配備した。課題では、モニター中央に視覚刺激(C1)を様々な持続時間で呈示し、呈示後に、C1の呈示時間を短・中・長に三分類させ、それぞれ左・中・右のボタンを押すと正答とした。また、呈示時間の短・中・長と押しボタンの空間配置との連合を統制するため、C1の呈示位置を左・中・右のいずれかとし、その位置に合わせた左・中・右のボタン押しを正答とする、空間性遅延反応課題を準備した。課題制御システムを整備した後に、課題を遂行できるように、順に2頭のサルの訓練を開始した。そのうち1頭は、本課題と統制課題の双方とも、90%以上の正答率で安定して課題を遂行できるようになった。 一方で、多点電極を用いて複数の神経細胞活動を同時に記録するためのシステムのセットアップを進めた。多点電極は、新たに開発されたVector Array電極(NeuroNexus社製)を用いることとした。それに合わせて、32ch可変ゲインアンプPGA32(MCS社製)を導入した。電極の保持や脳内刺入のための装置は独自に製作し、記録システムはほぼ完成した。 上記の通り、実際の記録実験を遂行するための準備がほぼ整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は、おおむね順調に進展している。 課題システムを整備して、2頭の動物の訓練を開始し、うち1頭は安定して課題を遂行できるようになった。多点電極を用いて記録するためのシステムの整備もほぼ完了し、実際の記録実験を遂行する準備が整った。 当初の計画とは異なり、動物が課題を遂行する困難さを考慮して、統制課題として空間性遅延反応課題を用いることとした。また、多点電極は、新たに開発されたVector Array電極(NeuroNexus社製)を用いることとした。このような計画変更は、研究内容に影響を与えないと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
大脳皮質前頭連合野や大脳基底核からの記録実験を開始する。記録にあたっては、まず単一電極での記録を行い、これらの脳部位のマッピングを行って、課題に関連する領域を同定する。その後に、多点電極を用いての記録実験を実施する予定である。電極からの信号は、増幅して、ハードディスクに保存し、単一神経細胞からのスパイクの検出、およびそれ以降の解析は、オフラインで行う。 記録実験と平行して、神経細胞活動の解析を進める。解析では、保存したデータから単一神経細胞活動を検出した後に、単一神経細胞における課題関連活動の解析、特に課題中の刺激呈示時間との関連を解析する。さらに、神経細胞活動の同時記録データを活用して、大脳皮質-基底核回路における時間情報処理機構を検討する。
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