2015 Fiscal Year Research-status Report
ペンテコステ派とパール行商ーサマが経験する21世紀の仕事と祈り
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26360001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青山 和佳 東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (90334218)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 東南アジア / サマ人 / 経済 / 宗教 / キリスト教 / 生活 / 都市 / ペンテコステ |
Outline of Annual Research Achievements |
実施2年目となった本年度の実績は、大きくわけてつぎの四点があげられる。第一点は、昨年度読み込んだ、アジアの宗教(とくにペンテコステ派キリスト教)と経済にかんする人類学、社会学、社会経済学などの文献をふまえて、本研究の分析フレームワークの構想を英語論文にまとめ、SEASIA Conference at Kyoto International Conference Center on Dec. 12, 2015において口頭報告したことである。その後、フルペーパーとしてまとめた論考をHarvard-Yenhing Institute Working Paper Seriesとして発表した。第二点は、前掲のSEAISA Conferenceにおいてアブストラクトが評価され、当国際研究会議のcovenorのひとりであるProf. Michael Feener (当時National University of Singapore, 現在Oxford University)よりディナー招待をうけたことにより、NUSのAsia Research Institute (ARI)のReligion and Globalisation Clusterのメンバーへと知り合い、アジアにおける宗教と経済、宗教と開発をめぐる状況について議論できたことである。以上の二点により、第三点としておこなった、本研究のコアであるフィールドワーク(2016年3月11日~同3月31日)において、当初筆者が想定していたよりもより豊かな視点から、フィリピンのダバオ市のサマ人のペンテコステ派キリスト教の信仰実践およびパール行商を含む生業活動について多くの事実発見を行うことができた。さらに第四点として、過去に収集した複数の家族のオーラルライフヒストリーの日本語での既発表(6章分)の英語翻訳につき、これまでは国内の紀要に発表してきたが、Harvard-Yenhing Institute Working Paper Seriesとしての掲載が認められたことである。年度内に1本を掲載し、今後、のこりの4章を順次掲載していく見通しである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二年目にあたる平成27年度は、単年度としては当初の予定よりも研究を進めることができ、これにより昨年度における当初計画に照らしての遅れについて十分にとりかえしたので、全体としておおむね順調に進展していると言える。より具体的にいえば、つぎのような過程を経てのことである。すなわち、初年度にあたる昨年度(平成26年度)は、思いがけない火災による調査地の全焼という事態に直面し、科研費とは別の研究費(所属先の個人研究費)による緊急渡航、被災地の初期状況の把握、およびそれをとりまとめての国際学会での報告などによりほとんど研究をすすめることができなかった。それだけではなく、被災後の人びとの生活再建過程において、多くのサマ人が同じダバオ市の別の地域に移住したのみならず、個別のペンテコステ派教会をつくったために、「調査地がふえつづける」という事態が生じたことから、一時的に「フィールドワークするフィールドが特定しにくい」という状況となった。しかしながら、そのように「フィールド」の揺れがつづく状況において、従来から交流のある複数のサマ人家族を訪問しつづけたことにより、徐々にフィールドワーク再開のめどが立つようになったのみならず、これまでよりも深い信頼関係のもとにこれらの人々の信仰実践や生業活動について調査を継続することをゆるされるようになったと実感している。そのため、想定していたよりもズムーズにさまざまなことに参与観察し、また人びとの語りをきくことが可能となり、初年度における「遅れ」を埋め合わせ、むしろ想定していたよりもよりよい形で研究を進めらるようになったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
三年目にあたる本年度は、応募時の問題意識を念頭におきつつも、調査地の動態におうじて研究計画を適切に調整し、のこり二年間の期間全体においてより効果的に研究を推進できるよう、つぎの四点を行う。第一に、文献調査の継続である。
第二に、フィールドワークの継続である。 第三に、過去に収集したオーラルライフヒストリーの翻訳の継続である。 最後に第四として、以上の研究活動について、中間的な報告として国際学会等で報告を行う。これは現時点では、平成28年7月6日~8日にフィリピンのシリマン大学において開催されるICOPHIL10での報告、および平成29年1月にHarvard-Yencing Institeおよび東京大学東洋文化研究所により東京大学において共催される研究会議での報告を予定している。
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Causes of Carryover |
残額が生じているのは、初年度に現地調査がかなわなかったことによる。その事情(調査地火災等)についてはすでに昨年度の実績報告書に報告したとおりである。2年次にあたる本年度は予定通り現地調査を実施したが、調査地の状況(2016年5月9日実施の大統領選挙前であること、および2014年4月の火災以降、調査地の住民の転居がおちつくにはもうすこし時間がかかること)にもとづいて、現地調査はいそがずに、3年次、4年次に展開したほうがよいと判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
3年次、4年次において、これまでよりも現地調査の実施期間を長くとり、その費用に充てる。
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Research Products
(4 results)