2015 Fiscal Year Research-status Report
ポスト・イスラーム主義と政治:トルコの公正と発展党政権下民主化改革を事例として
Project/Area Number |
26360002
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
澤江 史子 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (70436666)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ポスト・イスラーム主義 / トルコ / ポスト・世俗主義 / イスラーム政党 / 地域研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、当初の予定通り、ポスト世俗(主義)とポスト・イスラーム主義に関する近年の研究動向を踏まえたうえで、トルコの政治史に焦点をあててその相補的展開を概観しながら考察した。その成果は論文「ポスト世俗主義とポスト・イスラーム主義の時代のトルコ」として発表された。論文においては、公正と発展党政権は2002年の政権発足から今日までの期間においてその前半は民主化や自由化という点でかなり肯定的評価を国内外で得てきたにもかかわらず後半にはその評価は反転し、特に本年は権威主義化が強く批判される年となったが、それは必ずしもイスラーム的政策との関連とは言えず、むしろ従来のトルコ政治の一般的特徴との関連で捉えられるべき問題であることを、政権期間の前半と後半にそれぞれ注目を浴びたジェンダー関連の論争について、後半期におきた論争の方がよりリベラルな意見が政府や親政権のイスラーム系メディアでより優勢であったことを例示して指摘した。 また、過去の研究テーマであったイスラーム系女性NGO「首都女性プラットフォーム」に関する論考を改稿する機会があったことから、当初予定とは扱う事例トピックを変更し、公正と発展党支持層に位置付けられながらもジェンダーや民主主義の観点から政府に対しても批判的言動で知られるこのNGOについて、活動家自身による意味づけを分析した。その成果は論文“Post-Islamist Advocacy on Gender in Turkey: The Capital City Women’s Platform”として発表された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は前述の通り、本研究のキーワードであるポスト世俗(主義)とポスト・イスラーム主義が学術用語としてどのように位置付けられるのかを概観するとともに、それが相補的なものであることをトルコの具体的事例を通じて検討することができ、理論的側面と事例分析を組み合わせるという本研究の目的に沿って研究を進めることができている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年はポスト世俗(主義)とポスト・イスラーム主義の相補的展開をトルコ内政に限定して研究したが、次年度は国際的な言説空間をも視野に入れた研究を行いたいと考えている。より具体的には、現在、公正と発展党政権が、シリア内戦のトルコへの波及問題と自国内クルド左派ゲリラ問題の交わる点について、どのような国際的言説・認識構造におかれているのかについて考察したい。それは、現実のトルコ政治社会において政権の権威主義化が深刻な問題となり、クルド問題やシリア内戦と関わる自爆攻撃が何度も発生するという重大な事態をめぐる国内外の言説がどのようにポスト世俗(主義)とポスト・イスラーム主義との相互性と関連付けられるのかという問題意識による。この問題設定は国際政治系研究者の共同研究に招かれたこととも関連しており、異領域専門家との学術交流を通じて研究の視野と方法論を別の観点から深めていくことを目指す。
|
Causes of Carryover |
本年は2度の長期休暇中の現地調査を予定していたものの、現地の政治社会情勢が急激に悪化し、現地情勢に精通しているものであっても危険の予期が困難であると判断されたため、夏季休暇中に予定していた現地調査をキャンセルし、年間で1回のみ現地調査を行った。そのため、現地調査にかかる費用と見込んでいた金額で未使用分が発生し、次年度に繰り越すこととなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度も現地の情勢は流動的であるが、一時期よりは落ち着く方向にあるように見える。そこで前年度の未使用額は本年度、現地調査を行う際に使用する計画である。
|
Research Products
(2 results)
-
-
[Book] NGOs in the Muslim World2016
Author(s)
Susumu Nejima, Egbert Harmsen, Masayuki Aktsu, Amy Singer, Sachiko Hosoya, Takenobu Aoki, Fumiko Sawae, Ihsan Yilmaz, Idris Danismaz
Total Pages
130 (87-101)
Publisher
Routledge