2017 Fiscal Year Research-status Report
ポスト・イスラーム主義と政治:トルコの公正と発展党政権下民主化改革を事例として
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26360002
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
澤江 史子 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (70436666)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トルコ / 親イスラム政党 / クルド問題 / シリア内戦 / 東方問題 / 世俗主義 / 公共圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
トルコでは2016年7月の失敗したクーデタ以来、反政権勢力を含む野党勢力への引き締めが強まる一方であり、内政が大きく混乱している。加えて、シリア内戦へのトルコの武力介入が一層強まってきた。こうした状況下で、自由な調査研究活動に支障が生じており、研究代表者との接触によって調査対象者や情報提供者に権利侵害などの不利益が発生しうるため、現地調査は慎重かつ最低限の範囲で行った。本年度の研究方針はこの状況判断に依拠して立てたため、本年度は現政権政党に連なる親イスラム政党の政治目的を国際政治やトルコ国内政治の規範的ヒエラルキー構造に位置付ける大局的な論考を執筆することに重点を置いた。 その成果として、親イスラム政党のみならず、ムスリム多数派社会と認識されるトルコが西洋中心の近現代国際政治においてどのような位置づけにおかれ続けており、それが現政権のシリア内戦と関連したクルド政策にどのように影響を与えているのかについて、論文「未完の東方問題」を発表した。また、そうした近現代国際政治の価値のヒエラルキー構造に大きく規定されたトルコ国内の世俗主義的な価値規範ヒエラルキーが、現政権による民主化改革とその後の権威主義化の波を得て、未だに国際規範と連動してトルコ国内の世俗‐イスラムの対立を喚起し続けていることを、論文“The Condition of the Post-Kemalist Public Sphere in Turkey”として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、トルコでは大きな政治変動と並行して権威主義化が起きている。政権に批判的な立場の人物や組織に対する現地調査に慎重にならざるを得ないため、当初の調査計画を十全に実施できたと言い難い状況にある。そうした事情のため、本来は本年が補助事業最終年度であったが、次年度に事業期間を延長して調査研究を継続する予定である。ただし、限定的でありつつも現地調査を行い、これまでに行ってきた調査の結果と併せて成果を発表している。このため、達成度についてはやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、トルコ情勢が流動的であり、その行方が本研究における分析作業と直接的にかかわっているため、今後の研究としてはトルコの最新情勢を把握するために現地調査を継続しつつ、引き続き、公正と発展党政権期の民主化と権威主義化の波をトルコ現代政治とそれを規定する国際関係の構造に俯瞰的に位置付けた分析を行う。
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Causes of Carryover |
現在、トルコでは大きな政治変動と並行して権威主義化が起きている。政権に批判的な立場の人物や組織に対する現地調査に慎重にならざるを得ないため、当初の調査計画を十全に実施できたと言い難い状況にある。そうした事情のため、本来は本年が補助事業最終年度であったが、次年度に事業期間を延長して調査研究を継続する。
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Research Products
(2 results)