2015 Fiscal Year Research-status Report
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26360011
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
谷川 真一 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (40410568)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中国 / 文化大革命 / 政治社会学 / 抗争政治 / 派閥抗争 / 暴力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国文化大革命の派閥抗争と暴力発生・拡大の原因とプロセスを、政治社会学の新たな潮流である抗争政治論の分析枠組みを用いて明らかにすることを目的としている。本研究は、資料収集からデータ作成までを行う第1段階、質的・量的分析を行い、分析結果を学会等で発表し、国内外の研究者との対話を通じて検討を加える第2段階、分析結果をいくつかの英語論文にまとめ専門学術誌に公表するとともに、それらを単著にまとめて刊行する第3段階の3つの段階に分かれる。 平成27年度は、上記第二段階の資料の読み込みと初期的成果の学会での発表、国内外の研究者との意見交換を中心に行った。また、前年度に行き続き、基礎資料である紅衛兵新聞の収集を行い、当初目標であった130部をほぼ収集し終えた。具体的には、まず平成27年度10月に北京を訪れ、文革研究の第一人者であり、研究代表者の大学院時代の指導教員でもあるアンドリュー・ウォルダーと本課題についての詳細な意見交換を行った。 また、研究発表としては、平成28年2月の国際シンポジウム「中国文化大革命と国際社会ー50年後の省察と展望」で、「『欧米の社会科学』と文化大革命研究」と題する報告を行うとともに、同年3月の中国現代史研究会主催のシンポジウム「文化大革命と中国研究」では、「文革50年――文革論から文革研究へ」をテーマとした報告を行い、内外の研究者との意見交換を行った。 また、公表論文としては、平成28年1月に岩波『思想』の特集「過ぎ去らぬ文化大革命ーー50年後の省察」に論文「政治的アイデンティティとしての『造反派』」を寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「おおむね順調に進展している」とした理由は、データ収集、分析、内外の研究者との意見交換、研究発表などの面で全体としては順調に推移しているからである。しかし一方で、分析方法の面で研究計画に若干の修正を加えたために、一部遅れが生じているところもある。 まず、資料収集の面では、当初の目標であった紅衛兵新聞130部をほぼ収集し終えた。この資料は、文化大革命期に地方都市(西安市)で、学生、労働者が自主的に発行した新聞等の出版物であり、体系的なコレクションとしては国内のみならず海外でも例を見ない貴重なものである。 次に、データ構築と分析に関してであるが、当初は紅衛兵新聞の記事から計量的データを作成する予定であったが、記事の内容を詳細に検討していく過程で、その内容がきわめて複雑かつ多岐にわたることから、計量分析よりも質的分析が妥当であることが明らかになった。このため、今年度初めの段階で、計量データの作成から新聞記事の質的な読み込み・分析へと作業の重点をシフトさせた。この点は、当初の計画からの変更ということになるが、結果的には3年計画の2年目開始時に変更したことにより、研究の進展への影響を最小限に抑えることができたと考えている。 また、本年度は北京を訪れ、文革研究の第一人者であるアンドリュー・ウォルダーと意見交換を行い、きわめて有用なアドバイスを得たことに加え、学会、シンポジウムでも二度にわたって報告を行い、貴重なフィードバックを得た。 さらに、現時点までの研究成果を、幅広い読者をもつ岩波書店発行の月刊誌『思想』に発表できたことも有意義であった。 以上のように、今年度は研究方法の面で若干の軌道修正を行ったものの、全体としては研究は順調に進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本課題の最終年度に当たることから、研究成果の公表と国内外の研究者との意見交換を中心に行いたい。具体的には、学会、研究集会などでの報告は、4月のドイツ・ケルン大学で文化大革命開始50周年を記念して行われる国際研究集会での報告、6月のアジア政経学会全国大会で研究代表者がオーガナイザーを務める分科会での報告、11月に神戸大学でアンドリュー・ウォルダー(スタンフォード大学)、楊海英(静岡大学)などを招聘して開催予定の国際研究集会などを予定している。 論文、著書の刊行予定としては、まず英文の中国研究学術誌としては代表的なModern China誌(SSCIランキングでは、Area Studies分野で第8位)に論文が掲載されることがすでに決定している。そのほか10月刊行予定の(共著)『中国文化大革命と国際社会』(集広舎)、同じく10月刊行予定の『現代中国研究』誌に論文が掲載されることがすでに決まっている。以上に加え、さらに別の英文論文を代表的な査読付き英文雑誌に投稿する予定である。 最後に、以上の研究成果をまとめ、英文著書の刊行に向けての準備を鋭意行う所存である。
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Causes of Carryover |
当初計画していた計量データの作成に必要な大学院生の研究補助のための人件費が、研究計画の変更(「現在までの進捗状況」参照)により不必要となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、11月に海外の研究者を招聘して国際学術会議の開催を計画しており、そのための経費の一部に使用したい。
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