2015 Fiscal Year Research-status Report
東南・南アジアにおける遺伝資源アクセス手法の研究と手順の明確化
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26360016
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
深見 克哉 九州大学, 学内共同利用施設等, 教授 (00515322)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
善藤 威史 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50380556)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バイオテクノロジー / 科学技術政策 / 生物多様性条約 / 名古屋議定書 / 国際法学 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、国内法が存在しない国としてネパールを、また国内法があるもしくは整備中の国として、タイ、インドネシア、ベトナムを対象に調査を進めている。また、ネパールとインドネシアにおいては、モデル共同研究を軸にMTAの雛型化やPIC/MAT取得の手順などを調査してきた。 国内法や生物資源取得ルールが明確でないネパールで開発したMTA雛型は、ネパールの研究所および管轄する農業省の合意を得て、実用性の有るものが設計できた。本雛型は、東チモール(現時点で国内法はない)でも合意ができたものとして実証も行った。 国内法を整備しているインドネシアでは、共同研究の実施の際のMTA案がBSに関する合意に至らないまま、国内でのPIC手続きがインターネットを介したシステムになり、MTAの最終同意までには至らなかった。現在、このシステムで提供されるMTA案の入手と合意可能かどうかの調査を進めている。 タイにおいては、タイ政府環境省、BIOTEC(微生物保存機関)、マヒドン大学の責任者へのヒアリングから、幾つかの生物種については国内法が整備され、PICの取得方法や利用方法が定められており、未決の生物種については、相談窓口を設置し、入手を容易にしている現状が理解された。国内法の制定やルールが存在している国での大学での研究におけるMTA雛型について、マヒドン大学と連携し協議を進めていくことにしている。 研究に用いる生物資源の入手を通じたABSの調査過程で、国内法の有無以外に、生物種の違い、その国に保管されている生物資源か、フィールドで収集する生物資源かの入手方法の違いが、MTAの内容もしくは入手の可否に大きく影響することも明らかになってきた。今後、日本国内の研究機関において、どのような生物種でどのような入手困難事例が発生しているのかを注意深く現状調査していく予定である。それらを基に、生物種や採取場所の違いにも対応可能なMTA案の設計も進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内法がない国に対してのMTA雛型は設計完了し、実証も終わり利用可能なものになった。また、各国の生物多様性条約・名古屋議定書の批准に伴う国内ルールについてもある程度調査が進んでいる。また、具体的な研究モデルを基に生物多様性条約・名古屋議定書に関する調査を行う事で、具体的な問題点(生物種、採取場所などの要因)なども顕在化出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方策として、インドネシアの新しいPIC取得システムの調査を進め、インドネシアが提案しているMTA案の入手と妥当性検証を行う。タイについては、大学間の共同研究において、マヒドン大学と連携しタイ政府のABSポリシーに従った共同研究案・MTA案を検討する。ベトナムについては、未調査であった薬草の利用に関する政府のポリシー、MTA案などを具体的に議論し、最終的に国内法がある国々のMTA雛型の完成を進める。国内においては、海外生物資源の入手に関するアンケート調査を行い、本研究調査対象国以外の国における問題点も抽出し、比較検討も行いたい。 最終的に、海外生物資源の入手において、PIC/MATのルールの整理、ABSの大学研究における注意点を明確にし、入手手順とMTAのモデル化の完成を行う。
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Causes of Carryover |
インドネシアの訪問を計画していたが、インドネシア政府が、遺伝資源アクセスに関する国内法と国内ルールの策定をしている途中で有ったため、次年度に、国内法とルールが確定した段階で訪問し、調査研究を実施する計画に変更したため。 また、スリランカも国内事情(選挙が8月に実施)後、いろいろと遺伝資源アクセスに関する不確定な状況になったことで、こちらも訪問を延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
インドネシアの国内ルールが確定したことで、より詳細なルールとMTA等の条項の調査を実施することにしている。LIPIの副所長との面談も計画した。
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