2016 Fiscal Year Annual Research Report
Mental State and Social Background of Contemporary Korean People:
Project/Area Number |
26360022
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金 香淑 京都大学, こころの未来研究センター, 連携研究院 (70548106)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | シャーマニズム / 身心変容 / 癒し / 韓国 / 東アジア / 宗教 / 民俗 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代の韓国において、今なお伝統的な巫俗が人々の信仰を集めている実態を分析する本研究では、これまでに慰霊祭と部落祭を中心に調査を行ない、共同体の安寧と繁栄、構成員の幸福を願う心理について明らかにしてきた。2016(平成28)年度は、当初の予定では他地域(日本やモンゴル等)との比較研究を進め、韓国シャーマニズム特有の事情や社会的背景などを考察するつもりだったが、韓国国内の社会的変動の大きさに鑑み、韓国での実地調査を優先した。具体的には、2017年2月と3月の2度に分けて、ソウル、慶州、蔚山、東海岸地域(文武大王水中陵前)、釜山、珍島でそれぞれ調査を行った。慰安婦問題や大統領弾劾裁判で揺れるソウルや釜山などの都市部では、ろうそく集会及び少女像周辺での巫俗パフォーマンス等の実態調査を行った。一方、セウォル号事件現場近くの珍島や沿海部では、祈祷や慰霊祭などの調査やシャーマンに対するインタビューなどを行った。これらの調査を通じて、個人の生死や共同体の存亡といった従来のテーマだけでなく、政治や社会的事件といった現代的テーマについても、慰霊や「癒し」を求める韓国人の特性が浮き彫りになり、巫俗の社会的な役割の大きさや民族的特色の強さを確認することができた。 その成果の一部は、2017年3月にオーストラリア国立大学で行われた連続講義「東アジアにおける戦争と和解」の一回として、「韓国における宗教と和解:戦争の記憶とシャーマニズム」と題して発表した。慰安婦問題と少女像をめぐる国家間の葛藤の中、民間が主体となって「癒し」を求める動きを紹介し、韓国人の宗教的心性と巫俗の影響力について考察した。この内容は『身心変容技法研究』第7号(2018年3月刊行予定、京都大学こころの未来研究センター)に論文として発表する予定である。
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