2014 Fiscal Year Research-status Report
チュニジアの多言語社会におけるコミュニケーションネットワークの研究
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26360027
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
中挾 知延子 東洋大学, 国際地域学部, 教授 (70255024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小早川 裕子 東洋大学, 国際地域学部, 講師 (90459842)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地域研究(北アフリカチュニジア) / 社会ネットワーク分析 / 多言語社会 / 中間層 / フランス語 / チュニジア語 |
Outline of Annual Research Achievements |
チュニスとその周辺の郊外の地域において実地調査を行った。6月後半に1週間チュニスに出向いて協力研究者と研究打ち合わせを行った。教授のアドバイスでは、チュニス地域の住民の現状から、最初の調査では社会クラスを一つに絞って行いその後で拡大するほうが良いことと、いきなり質問票での調査ではなく、まず該当する社会クラスの十数名ほどの日常生活の様子を把握するためのインタビューの方が良いということであった。そこで、社会クラスを中流層に絞った。理由として、中流層はチュニスとその郊外に多く居住し、地区でコミュニティを形成しており、市民活動もしばしば行われていること、そして高等教育を受けている人が多く、フランス語とチュニジア語の使い分けの様相が日常生活で顕著なことがあげられる。これは初年度の多言語社会の調査において他の地域や社会クラスよりも明確なデータが得られると期待できるためである。次いで8月に3週間該当の地域で現地調査を行った。1週目は協力研究者に紹介してもらった大学院生、高校教師、大学教授、ジャーナリストなどインタビューを行った。2週目はチュニス郊外の都市マルサの市役所に出向き、市民生活課の職員と面会してマルサにおける社会クラスの分布や中流層の地区に住むリーダーを何人か紹介してもらった。その方々にインタビューをして、併せて実際の市民活動の場に同席させてもらった。その中には週末のゴミ拾い活動や、国内の観光エージェントを招いての会合があった。活動に参加することでマルサにおけるコミュニティの多くの方々、引退した高齢者、主婦にもインタビューをとることができた。3週目は再びチュニス市内で協力研究者の紹介で、高学歴の若い女性で、仕事を持っているアクティブな方々に会うことができ、インタビューをとることができた。インタビューはすべてメディアに記録することを承諾してもらった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多くの中流層とのインタビューを通して、彼らにとってもフランス語の位置づけや、精神面での受け止め方、実際の有効性を多大に理解することができた。インタビュー内容はかなりの量になるため現在整理中である。中間層にとってチュニジア語及び正則アラビア語の運用についても母語であるという以上のさまざまな位置づけを把握できた。また、中流という社会クラスという観点から見た場合に形成されているコミュニティという面からフランス語を取り入れた生活文化を調べることができた。さらに、高学歴でアクティブな女性が多く存在する中流層において、イスラム教の国という環境をふまえての彼女たちのライフスタイルや考え方について、新たな視点を得ることができた。社会ネットワーク分析を行っていく上で、本年度行ったインタビューは質問票の内容にも影響を及ぼし、また分析の際においても有用な視座を与えてくれると考える。しかしながら、1月末~3月の適当な時期に予定していた社会ネットワーク分析の基となるアンケート調査を現地に赴いて実施できなかった。北アフリカにおいてISなどイスラム過激派の脅威が広がり、現地からの情報も勘案して渡航をあきらめた。また、バルドー博物館におけるテロの影響を受けての外務省の治安情報も考慮すると、しばらくの間は現地調査ができないのではないかと心配している。そのことから、協力研究者に相談したところ、まとまった人数の大学生に代理でアンケート調査をしていただけるということで、質問票一式を現地へ送った。大学生は中流層の子女であり、将来は大学院に進む学生やフランスへ行く者も多いということである。一ヶ月後協力研究者から調査結果が郵送で送られてきた。現地へ行くことをためらったことでできなかったアンケート調査の1回目を行うことができた。このデータについては現在分析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
地域コミュニティでの中流層のネットワーク調査はしばらく行えないと考えている。コミュニティといってもさまざまな形が想定されるので、現地へ赴いた際にできる範囲でネットワーク調査を行っていく予定である。社会ネットワーク分析では、若者世代、職種、趣味を共有するコミュニティに着目した研究も見られるため、今後チュニジアの治安状況を見守りつつ行っていく。しかしながら、現地へ行くことが難しい状況では、SNSを通じたオンラインコミュニティのネットワークや、現地での協力者を通じて間接的に調査を行っていくこともやむを得ないのではないかと考えている。また、貧困層の地区は治安が悪くなっており危険を伴う恐れを考慮すると、中流層に限っての調査も仕方がないのではと考える。いずれにしろ治安状況が現状より回復すれば再び現地に赴いてアンケート調査とインタビューを並行して実施したいと考えている。 並行して本年度に協力研究者の協力で得られたデータの社会ネットワーク分析を行い考察する。
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Causes of Carryover |
当初1月末に予定したチュニジアでの現地調査の旅費に充てる予定であったが、1月に入ってからのISやアルカイダなどのイスラム過激派グループによるテロを理由に中止したため。そのあと3月に計画もしたが、チュニジアでのテロのため再び断念した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
9月ごろまでは渡航を控える予定である。その代わりに現地の研究協力者や知り合いの研究者に小規模ながらアンケート調査をお願いしようかと考えている。その際の謝金に充てる。秋以降は現地の状況にもよるが渡航を予定しているためその旅費の一部に充てる。
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