2015 Fiscal Year Research-status Report
なぜ特定の集団だけにサルマラリア感染を含めたマラリア感染が集中しているか
Project/Area Number |
26360029
|
Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
前野 芳正 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (70131191)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中澤 秀介 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (20180268) [Withdrawn]
高木 秀和 愛知医科大学, 医学部, 講師 (90288522)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | マラリア原虫 / 分子生物学 / 疫学調査 / 国際研究者交流 / ベトナム / ヒト / 媒介蚊 / 薬剤耐性遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究遂行者は、ベトナム社会主義共和国カンホア省カンナン県カンフー行政区において、同地区住民を対象としたマラリア感染に関するactive case detection (ACD)とpassive case detection (PCD)および媒介蚊を対象としたマラリア感染の分子疫学調査の結果から、カンフー地区は山間地という所でありながら、住民が居住する住宅地ではほとんどマラリアの伝播が起きていないことを媒介蚊の調査から明らかにした。そこで住民の行動調査から生活の糧を得るため森林内で作業を行う住民と森林に立ち入らない住民の2グループに分けることが可能であり、この2グループにおけるマラリア感染率の比較検討を行うと、頻回にわたり森林内に立ち入るグループの方がマラリア感染率が高いことが示唆された。ヒトの調査結果を裏付けるべく森林で媒介蚊の調査を行った。その結果、ヒトマラリア原虫以外に4種のサルマラリア原虫が検出され、検出された4種のサルマラリア原虫はいずれも人獣共通感染症に関与するものであった。これらのマラリア原虫感染媒介蚊は森林内と森林周辺では感染陽性率には差を認めなかった。しかし、マラリア原虫の伝播に重要な位置にある生殖母体の遺伝子解析を行うと、ヒトから検出された各種マラリア原虫の生殖母体関連mRNAは森林内で捕集された媒介蚊から検出された生殖母体関連遺伝子と相関していたが、森林周辺から捕集された媒介蚊とは関連性が低かった。この点地ついて他の遺伝子、今回はマラリア治療薬であるアルテミシニンに対する耐性遺伝子を検索したところ上記と同様な結果を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
住民が居住する住宅地におけるマラリア伝播はきわめて少数であり、伝播の主たる場が森林であることが媒介蚊と住民の調査で明らかとなった。さらに、マラリア原虫の伝播に係わるmRNAの遺伝的多型について媒介蚊とヒトの両者を対象として検討すると、ヒトにおける遺伝的多型の種と頻度について解析すると、感染の場が森林周辺に比べ森林内であることが判明した。 以上の調査結果より以下のことが志さされた。 1.調査地区のマラリア伝播は地区住民の行動様式に起因している。 2.調査地区におけるマラリア原虫の伝播に係わるmRNAの遺伝的多型は同じベトナムの他地区に比較し限られていた。これは調査地区の住民が比較的孤立した環境におかれていることに起因していると推測された。 以上の結果より、本検討課題で設定した仮説を示唆することができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査結果を基盤とし、ヒトと媒介蚊の双方から生物学的検討によるマラリア感染、伝播へのアプローチに、詳細なヒトの行動様式や種々の環境因子を加え、総合的地域研究を行う。殊に宿泊を伴う森林内での活動において、家族(者)がマラリアの供給者となっている事。また、森林内での宿泊を伴う活動において、蚊に対する防御策が不完全な状況であることが推測されている事。これらの事象について詳細な解析、検証を行う。 また、本年度の調査過程において東南アジアで問題となっている熱帯熱マラリア原虫の治療薬であるアルテミシニン耐性原虫の存在を見出した。この耐性原虫の遺伝的変異を特徴の解析を通して地域での感染、伝播の特徴を把握する。この遺伝的変異は地域ごとに特徴的な変異が認められている。この解析を通して地域研究の一情報が加わることになる。 新年度以降は、同じベトナム国内で別の調査地でこれまでの結果と同様な結果が得られるか否か比較検討をすすめ、どの集団が感染リスクが高いか総合的に解析を行う。
|
Causes of Carryover |
当初計画では3,4か月に一度現地調査を行う予定であった。しかし、ベトナムNIMPEとの国際共同研究体制に移行したため、現地での調査活動に時間をかける必要性が減少した。その分を解析費用に充てることができたが、渡航費用、現地での謝金の一部に余剰金がでた。そのため繰越金が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
新年度は、これまでの調査地での調査結果を基にその結果が他の地域と比較し、相違点を明らかにし、どのような集団に感染、伝播のリスクが高いか検討を行う。NIMPEとの打ち合わせ、その結果に基づく予備調査などを新年度調査費に繰り入れる。かつ最終年となるため、成果の公表をすべくその準備のため効率よく調査、解析などを実行すべく費用を充てる予定。
|
Research Products
(3 results)