2014 Fiscal Year Research-status Report
1950年代台湾における中華民国政府の辺疆民族政策―多文化主義のもう一つの源流
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26360031
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Research Institution | Kyoto Seika University |
Principal Investigator |
田中 剛 京都精華大学, 人文学部, 講師 (10542136)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 台湾 / 中華民国 / 国共内戦 / モンゴル / 越境 / オーラルヒストリー / 戦後日本 / 留学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、辺疆民族に対する中華民国政府の制度や政策が、台湾へ撤退後どのように再構築されたのか明らかにすることを目的とする。具体的には、中国大陸の周縁部、すなわち「辺疆」と位置づけられたモンゴル、チベット、新疆などの地域と、そこから台湾に渡ってきたモンゴル、チベット、ウイグルの人々(辺疆民族)に焦点をあて、「辺疆」の要素が台湾政治や社会でどのような位置を占めてきたのか、それが台湾の国家統合にどのような特質を与えたのか明らかにすることである。 平成26年度は、以下の3点を中心に調査研究を進めていった。 (1)在台モンゴル人の実態と動向に関する実証的研究の展開:本研究を進めるにあたって、これまでに研究の蓄積と資料の準備がある在台モンゴル人について研究をさらに進展させ、得られた知見を学術会議で発表することによって、今後の研究の可能性や方向性を明確化した。(2)静岡での現地調査:第二次大戦末期におけるモンゴル人留日学生の疎開先が静岡であった。戦後もモンゴル人学生の多くが日本に残り、中華民国政府と中華人民共和国政府のエリート獲得競争のはざまで、彼らは日本にモンゴル人社会を築いていった。中華民国政府との関係を明らかにするため、静岡で資料を蒐集し、関係者にインタヴューを実施した。(3)台湾での現地調査、資料の閲覧・蒐集:台北の蒙蔵委員(モンゴル・チベット委員会)などを訪問しつつ、関係者らに連絡を取り、インタヴューを実施した。あわせて中央研究院近代史研究所、国史館、国家図書館等で文献蒐集をおこなった。 以上の研究から得られた成果をもとに、戦後のモンゴル人留日学生に関する論考など発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究を開始するにあたって「交付申請書」には、平成26年度の実施計画に次の4点をあげた。(1)在台モンゴル人の実態と動向に関する実証的研究の展開、(2)岩手での現地調査、(3)台湾での現地調査、資料の調査・蒐集、(4)アメリカでの資料の調査・蒐集である。 このうち(1)に関して、これまで研究を進めてきた在台モンゴル人の実態について、さらに研究を進展させ、成果を発表することによって、今後の研究の可能性や方向性をより明確化することができた。(2)に関して、第二次大戦末期にモンゴル人留日学生の疎開先が岩手であった。調査を進めるうち、留学生が岩手に移る以前の疎開先であった静岡に資料が残されていることが明らかとなり、静岡での調査に重点を移した。これによって、モンゴル人留日学生の戦後について全体像を明らかにすることができた。(3)に関しては、台湾の関係者に連絡を取り、順次、インタヴューを実施し、あわせて中央研究院近代史研究所、国史館、国家図書館などで関係資料の調査・蒐集を行なった。(4)に関して、アメリカでの資料の調査・蒐集ができなかったことは遺憾である。ただこれは、日本国内での調査で静岡に資料が残されていることが判明し、その調査・蒐集と関係者からの聞き取りに重点を置いたためである。以上から、本研究課題は順調に進展していると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、平成26年度に得られた研究成果を基にして戦後台湾の辺疆民族について現地調査と資料蒐集を引き続き行っていく。 (1)台湾における現地調査、資料の閲覧・蒐集:前年度に引き続き現地調査と資料蒐集を行う。とくに関係者に対するインタヴューに力点を置く。(2)欧米での資料の閲覧・蒐集:チベット・新疆からインドやパキスタンに脱出したモンゴル人、チベット人、ウイグル人を台湾まで移送するにあたり、台湾側と連絡にあたったのがイギリス政府とアメリカ政府であった。英国国立公文書館やアメリカ国立公文書館などで資料の閲覧・蒐集を行う。以上の研究で得られた成果は逐次発表していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額の238,504円は、26年度に実施を見送ったアメリカでの調査の費用に相当する。これは、日本国内での調査で、モンゴル人留日学生の戦後に関する資料が静岡に残されていることが判明し、その調査と蒐集を優先してアメリカでの調査を先送りしたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の研究費は、直接経費1,100,000円と間接経費330,000円の計1,430,000円に平成26年度の直接経費繰越金238,504円を加えた1,668,504円となる。 このうち27年度直接経費の内訳については、「交付申請書」の記載に準じた適正な使用を計画している。すなわち(1)「物品費」40,000円、(2)「旅費」810,000円、(3)「人件費・謝金」150,000円、(4)「その他」100,000円の計1,100,000円である。そしてこれに26年度の実施を見送ったアメリカ調査の費用として、前年度からの繰り越し238,504円を加える。
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