2015 Fiscal Year Research-status Report
朝鮮と台湾にみる日本植民地政策の解放後の社会への展開-人類学と歴史学の学際的研究
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26360033
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Research Institution | University of East Asia |
Principal Investigator |
崔 吉城 東亜大学, 人間科学部, 教授 (80236794)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 環 県立広島大学, 人間文化学部, 名誉教授 (40228648)
上水流 久彦 県立広島大学, 地域連携センター, 准教授 (50364104)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | セマウル運動 / 植民地 / 韓国 / 台湾 / 朴正煕 / 農村振興 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の崔吉城は、主に植民政策として稲の品種改良と朴正熙大統領のセマウル運動の関連にする映像資料を中心に資料を収集した。その結果、1930年代の映像からみる農村事情を把握しました。本科研のテーマに関する書籍を韓国において出版した。 研究分担者の原田環は、韓国のセマウル運動が、農村振興運動に止まらず幅広い変革運動で、農村以外の分野にも影響を与え、今日の韓国社会の形成に大きな影響を与えていることから、農業分野以外にも目を向け、1)「韓国のナショナリズムに及ぼしたセマウル運動の影響」、2)「韓国水産業に及ぼしたセマウル運動」、について主に平成27年度は取り組んだ。1)「韓国のナショナリズムに及ぼしたセマウル運動の影響」については、国会図書館(東京)、国立中央図書館(ソウル)を中心に史料調査を行った。韓国では、さらにセマウル運動がどのような民族教育を展開したかを明らかにするために、オリニ(子ども)図書館(ソウル)でも調査した。全体的にまだ調査を続行中である。 もう一人の研究分担者である上水流久彦は主に台湾における戦前と戦後の関係について調査を行った。李登輝元大統領へのインタビューを行うため、秘書などの調整を行ったが、台湾における大統領選挙や本人の体調の問題から平成28年度への継続課題となった。蒋介石自身、戦前の日本の統治方法を台湾で適用していることはすでに指摘されているが、娯楽を通じても行われていたことなどを明らかにする文献資料等を手に入れることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在は全く問題がないものの、研究代表者の崔吉城が平成27年に心臓バイバスの手術を受け、国外調査は予定よりも十分に行うことができなかったものの、全体的にはほぼ予定どおりに資料収集等の調査を行っている。ただ、台湾の戦前と戦後を結びつけるキーマンである李登輝元大統領にインタビューできていないことは、大きな課題として残った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は現地調査は補助とし、国会図書館等の資料収集に一層努める。ただ、韓国では農村意外にも目を受け、戦前と戦後の継続性に関して調査を行い、資料の充実化を図る。また台湾関連では、李登輝元大統領のインタビューには継続して実現できるよう努める。また最終年度であることから、韓国と台湾との比較に力点を置きたい。なかでも、戦後への影響は単に戦前の農村振興の模倣という点に限らず、戦後社会への影響、ナショナリズムとの連関など焦点を広げて議論を行っていきたい。分担者の原田環によれば、セマウル運動はナショナリズムと強く結びつくとのことだが、台湾では農村振興などにかかわる動きがナショナリズムには結びついていない。1970年代から広がり、現在は地域振興の核となっている「社区(コミュニティ)」との連関を考える必要がある。2000年以降の「社区」は特に日本の地域おこしをモデルとしており、その点も視野にいれて、戦前と戦後の農村社会における動きの把握、比較に努めたい。
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Causes of Carryover |
研究代表者である崔吉城が心臓バイパスの手術を11月に行い、東京や韓国等の長距離移動を伴う国内・国外調査が昨年度末まで医師の判断により実施できなかった。そのため、映像資料等の分析を行い、そのフォローを行った。だが、経費の大きい海外調査を十分に行うことができず、差額が生じた。加えて、分担者の原田環も手術を受け、しばらく調査活動に従事できなかったことも影響した。なお、両名とも現在は体調的に問題はなく、今年度の研究実施に差しさわりはない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は研究代表者の崔吉城は昨年度実施できなかった国内外の調査を十分に行うことで、資料の補充を行う。加えて、分担者や協力者との協議を活発に行い、韓国と台湾との比較分析を十分に行うようにしたい。また、分担者の原田環は漁村におけるセマウル運動に関する史料調査を注力し、アルバイト雇用を行い昨年度できなかった集めた史資料の整理を行い、最終的成果の充実を図る。
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Research Products
(5 results)