2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26360034
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
石上 悦朗 福岡大学, 商学部, 教授 (00151358)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | インド / 在来型工業 / 企業家 / ビジネスネットワーク / パンジャーブ州 / ケララ州 |
Outline of Annual Research Achievements |
科研費基盤研究Cの研究課題「インド在来型工業都市のビジネスネットワーク」を遂行するためにインド・ケララ州トリヴァンドラムの開発研究センター(Centre for Development Studies、CDS)に客員として籍を置き、パンジャーブ州でのフィールドワーク、研究会での発表、研究所スタッフとの共同研究を進めてきた。 パンジャーブ州・ルディアナの調査から概略以下のような知見を得た。全国ブランドの自転車組み立てメーカー概して新製品の導入、イノベーションなどに消極的である。その理由は長く国内市場が輸入代替工業化戦略の下で国内外、とくに海外からの競争から保護されてきたという数十年の経験を打ち破れないところにあると考えられる。部品メーカー(15社訪問)は商業ビジネスおよび職人カーストなどを出自とする企業家によって創業、経営されているが、彼らもまた同様に製造業の一員としては保守的である。そして、近年、中国製品の輸入による脅威が同産業でも高まる中、彼らが主として取り組んでいるのはいくつもある産業団体を通じた政府・政治家への陳情、彼らとの結びつきの強化であり、ビジネスライクな解決の方向とは異なる。これはパンジャーブ州の企業家の在り方の特徴といえる。なお、同州の企業家についてはパンジャーブ農業大学経営学科長S. カプール教授と頻繁に意見交換を行い、有益な知見を得た。 CDSではマニ教授と公共部門企業について共同研究の研究プランを前進させ、また、P.L.ビーナ准教授とは企業部門についてProwessのデータベースを用い、上位企業グループの経営指標の推移をさしあたりエクセルに入力してゆく作業を開始した。これらの研究成果をデリー、CDSおよびコチンで発表を行い、研究交流を深めた。初年度の研究としてほぼ初期の目標を達成し、次年度の発展に向けて足がかりを固めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記したように、パンジャーブ州の在来型工業の調査に関して初年度の重点課題である自転車製造業については十分な調査を行うことができた。同州の在来型工業に関しては、繊維・アパレル産業についても調査が必要である。これは次年度以降の課題である。 本研究課題は在来型工業都市としてパンジャーブ州、タミルナドゥ州(コインバトール市)さらにはグジャラート州(アーメダバード市)を取り上げて比較研究を行うことである。初年度の調査の実績から、堅実な調査を向こう2年度にわたり、タミルナドゥ州・コインバトールを中心に行うのが適切であるという認識に至った。 また、今年度海外研修としてケララ州に比較的長期に滞在できたことは、同州がいわば製造業衰退・サービス化の典型的な州であり、同州の経済についてある程度知見を得たことは、インド全体のサービス化の趨勢と製造業発展の可能性を検討する際に有益な知識、視点を獲得したと考えている。このことは研究目的には書いていないことであったが、海外研修によって派生的得られた研究上の成果である。 海外研修期間中にCDSの研究者と企業関係のデータベースの利用およびインドでは独立以来相当のプレゼンスを持つ公共部門(主に国営企業)について共同研究を開始できたことは、本科研の研究テーマを今後より広いパースペクティブにおいて遂行するうえで有益である。共同研究は今後も継続することになっている。 以上の研究の進展状況を踏まえると、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は以下のとおりである。 インドでの現地調査に関してはパンジャーブ州の繊維・アパレル産業、機械製造産業および企業家と企業家団体の発展について平成27,28年度の両年度調査を行う。また、南インドの在来型工業都市であるコインバトルのポンプセット製造業、繊維および繊維関連(繊維機械を含む)の予備調査・文献調査などを行う。さらに、ケララ州については初年度に共同研究の足掛かりができたので、同州ではなぜ製造業が発展せず衰退しつつあるのか、あるいはその他面においてICT技術を用いた新しい企業家が発展する可能性はあるのかなどについても検討を進める。在来型工業都市のもう一つの有力なケースであるアーメダバードのついてはおもに先行研究を整理し、かつ年次工業調査(ASI)データの分析から、パンジャーブおよびコインバトールとの比較検討を行う。 研究代表者は平成27年4月から同年9月初めまでエジンバラ大学南アジア研究センターで海外研修の機会を得たので、先行研究の整理と研究成果に基づく研究交流による研究の発展が期待できる。
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Research Products
(5 results)