2014 Fiscal Year Research-status Report
高度成長期後の製造職既婚女性の労働-生活史変容に関する実証的研究
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26360043
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
木本 喜美子 一橋大学, 社会学研究科, 特任教授 (50127651)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 女性労働と家族 / 労働-生活史 / ジェンダー / 女性労働史 |
Outline of Annual Research Achievements |
戦後日本の女性労働の雇用慣行とその労働-生活の変容を、近代家族規範との関係において明らかにすることを目的とする本研究では、当初たてた研究計画の一部を変更しつつ、おおむね初年度に必要な作業を終えることができた。 (1)まず女性労働史研究の方法論の検討については、英国エセックス大学のミリアム・グラックスマン教授が提起した方法を精査する作業を進めるとともに、それ以外の国内外における女性労働史研究についての研究方法に関する文献リストを作成し、読み進めた。そのなかで、女性労働研究の課題と方法に関する論文を執筆した(「女性たちはどこでどのように働いてきたのか-女性労働研究の課題と方法を再考する-(仮題)」中谷文美他編著『仕事の人類学』世界思想社、現在印刷中)。この論文をもとに、戦後日本の女性労働史を雇用労働と家庭内労働が相互に絡み合う過程として分析する視点を深める作業を行なった。その成果の一部を、2015年度日本フェミニスト経済学会(7月4日:東京女子大学)における共通論題「家事労働を問い直す」での報告依頼を受けたことから、発表するとともに論文化する予定である。さらに国際労働過程学会(2015年4月13日~15日、アテネ)に参加し、国際的な研究動向の把握に努める。 (2)メインのフィールドとして設定している八王子市、八王子織物業に関する既存研究の整理を行い、対象地域の特徴を明確にする作業を行った。特に磯村英一教授、奧田道大教授らの都市社会学者による当該地域への調査研究の蓄積をふまえるための文献サーベイに取り組んだ。このほか、当該地域とは異なるタイプの農村工業化と地域間分業に関する文献サーベイも行い、全国的な動向との関連について考察した。 (3)すでに調査を実施している福井県勝山市の再調査を実施し、上記(2)の地域差に関する知見を深めるために、既存の調査データの再整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミリアム・グラックスマン教授の女性労働史研究の方法論について整理し、これを深める作業に多くの時間を費やし、女性労働研究の方法に関連する論文執筆を行なった(「女性たちはどこでどのように働いてきたのか-女性労働研究の課題と方法を再考する-(仮題)」)。こうした女性労働研究の方法論に関する整理を試みることができたため、グラックスマン教授から直接レビューを受ける機会をいったん先延ばしすることにした。その代わりに、国際労働過程学会(2015年4月13日~15日、アテネ)に参加することにした。この学会では、女性労働に関わるセッションにおいて研究方法に関する最新の動向を把握することができることが期待されるからである。また上記の論文の執筆過程において、戦後日本における女性の雇用労働と家庭内労働との相互に絡み合う過程を分析するという着想を新たに得て、その作業にとりかかった。その成果の一部を7月4日の招待講演(日本フェミニスト経済学会共通論題「家事労働を問い直す」:東京女子大学)で口頭発表する予定である。 また工業地理学に関する研究蓄積(たとえば友澤和夫『工業空間の形成と構造』大明堂、1999年等)を精査し、本研究がメインの対象地域とする八王子の事例的位置づけを深める作業を進めた。八王子織物の関係諸機関・関係者への直接的なアクセスは次年度(平成27年度)の課題とすることになったが、この対象事例の位置づけを明確にするために不可欠の作業に取り組んだ。 以上のように、若干の予定変更が生じたものの、初年度に欠かすことができない課題のほとんどは、順調に達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)女性労働史研究に関する文献研究をさらに進める。特に英語圏の文献収集に力を注ぎつつ、ミリアム・グラックスマン教授の問題提起を受けとめ、さらに深める作業に取り組む。また国内の繊維産業を中心とする女性労働史に関する調査事例についての文献収集を進め、歴史的実証研究の到達点を探りつつ、方法論をより精査していくものとする。 (2)大都市圏の調査フィールドとして想定している八王子織物の資料収集およびインタビューに着手し、本研究が課題の中心においている女性の労働-生活史の聞き取り調査の可能性を探索する。地域産業類型に関する既存研究の文献サーベイも引き続き取り組んでいき、八王子の事例の位置づけをいっそう明確なものとする作業を行なう。 (3)すでに調査を手がけている既存の調査フィールドとしての福井県のインタビューデータの再整理と再構成をさらに進め、新たな調査地としての八王子の事例との比較検討および接合の可能性を探る。もうひとつの既存調査フィールドである福島県の事例との比較検討と接合の可能性についても、視野に入れて検討作業を行なう。
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Causes of Carryover |
例年3月に開催されることが多かった国際労働過程学会(アテネ)への参加を予定していたが、今回の日程が2015年4月13~15日になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際労働過程学会への参加旅費のほか、2015年度の助成金と合わせて調査旅費に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)