2015 Fiscal Year Research-status Report
近代日中女性関係史におけるジェンダー構築の総合的研究――竹中繁を中心として
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26360052
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Research Institution | Sapporo University |
Principal Investigator |
山崎 眞紀子 札幌大学, 地域共創学群, 教授 (00364208)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 照子 大妻女子大学, 比較文化学部, 教授 (50316907)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肉筆日記原稿修正 / 日記注釈 / 日中文化交流 / 中国での人物交流 / 中国の女子教育 / 朝日新聞竹中記事 / 市川房枝 / 服部升子 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.竹中繁中国日記の出版に向けて、注釈作業の完成度を上げた。注釈を付す語の選択を再検討し、大項目、中項目、小項目にわけて各項目の字数を決めて、各自研究メンバーの担当分を振り分けた。研究会開催日ごとの到達目標を掲げ、そこに向けて、項目執筆のためにの研究を各自進めていった。作業を行う過程において、1926年後半から1927年初頭にかけて中国の女子教育機関を中心に精力的に周り、各要人(ビッグネーム)との会見も綴られている女性ジャーナリストの記録「竹中繁日記」の出版の必要性はさらに痛感され、その実現に向けて、精査のレベルを上げる必要を感じ、この部分に研究の精力を多く費やした。手書きの手帳から判読して起こした原稿を再三細かく見直しを行い、精度の高いものへの修正作業も行った。 資金面や時間面の不足から中国現地調査の実現は難しかったが、注釈に関しては、図書館や研究機関を駆使し、日記に登場するヒト・モノ・コトの正確かつ綿密な注釈を試みるべく、調査研究を進めた。その成果である各自の分担の注釈作業の検討を行う研究会を4回ほど開催した。その反映は、公刊の際に日記を読むにあたっての興味や関心・理解を深めるために、人物紹介や学校機関の詳細、交通網や文化機関などの注釈にまとめていく予定である。付記することとして、今期は京都大学人文科学研究所の東洋史・東方学研究部の村上衛准教授の協力を仰ぐことができ、資料や参考文献についての助言が得られた。来期も継続して協力を依頼する予定である。 2.竹中繁と親交が深く、女性の地位向上に向けて活躍した市川房枝の女性参政権実現に向けての活動、その礎石調査も行い、竹中日記時代の女性のおかれていた社会的状況などの調査も行った。 3.次年度の成果公表の一端としてワークショップでの発表を行う計画を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで行ってきた複数回の研究会の成果によって、昨年度の課題だった肉筆の手帳からおこした原稿の不明点が判読可能になり、正確さの精度が上がった。日記注釈のために同時代の中国史関連の資料に多く当たり、また、研鑽を積んできた日頃の作業を通じて蓄積された知識や見識によって、固有名詞の見当が付き、判読もかなり可能となった。 竹中繁日記に記されていた時期の各新聞を調べ、その記事を収集もした。その関連記事を収集したものは、データ化も済んでいる。区分でおおむね、としたのは、昨年度に目標を立てた今年度の計画であった中国への現地取材が、資金面と時間面において余裕がなく、行えなかったからである。 また、書簡の整理・保存は竹中繁の遺族によってなされているが、その書簡の判読、交友関係の分析はこの研究の課題に挙げながらも、まだ解明着手の進展が緩やかな状態である。幸い保管されている遺族が協力的、好意的な姿勢であり、その関係の維持に努めながら、再度調査を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
「竹中繁日記」を手帳からおこして公刊に値するグレイドに上げていく課題はおおむね到達したので、注釈や資料の精度を上げ、公刊の際の具体的なフォームを考えながら出版助成応募に値する原稿の形に今後は調えていく。出版の際には、掲載すべき書簡の選択と整理が必要となる。書簡は判読しにくい肉筆であるし、交流関係の調査も必要となり、難度の高い作業である。書簡判読に当たっての新たな研究協力者が必要となるだろう。また竹中繁の交友関係を調査研究するために市川房枝記念館でのさらなる調査も行う予定である。 広く意見を摂取し、研究への新たなる視野および切磋琢磨するために、成果公表の一環としてジェンダー研究関連学会でメンバーによるパネル発表を行う計画をもっている。また、実地調査も行い公刊の際の写真資料等に供したい。竹中と深く交流した留学生の遺族がカナダに住んでいることがわかったので、聞き取り調査に行く必要も感じている。 なお、研究代表者の山﨑眞紀子は、平成28年4月1日に札幌大学地域共創学群から日本大学スポーツ科学部に異動した。勤務地が東京になったことから、研究分担者の石川照子教授や研究協力者で中国現代史担当の姚毅の3人で、東京において打ち合わせや研究会の時間がこれまでよりも多く取れることとなる。また、中国女性史、中国文学担当の研究協力者・藤井敦子や竹中繁研究の第一人者である須藤瑞代は、それぞれ大阪、京都に住むが、札幌よりも移動距離が短くなった分、これまでより多くの打ち合わせ、研究会の開催が可能となると思われる。最終年度ゆえに公刊に値する研究に向けて、書簡関連の研究も含め研究会開催を多く行うように努めたい。
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Causes of Carryover |
予定していた書籍購入が実行されなかったため。理由は、実際に日記注釈を行う際に必要なものとして、当初計画していた書物よりも実際に必要となったのは事典類などの値段が張るものであった。一冊の購入代金が高額なものが複数の種類必要になり、代表、研究分担者、研究協力者3名、合計5名分の均等配分するには大幅な予算不足となり、また、代表者が一括購入して所蔵するには、代表者の研究室が札幌にあったために研究メンバーが札幌に閲覧に来るとなると交通費、宿泊費などの諸経費が大幅にアップするため、購入をあきらめ、図書館や研究機関を利用することにし、その分、研究会の開催を多く行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
公刊という目標に向け、より頻繁に研究会を開き、調査に赴き注釈の完成度を上げる。また、28年度は書簡判読にも精力を傾けるために、そのための研究経費や研究協力費の計上にも充てたい。
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Research Products
(8 results)