2014 Fiscal Year Research-status Report
全英女性解放会議におけるジェンダー/人種/階級:「第五要求」形成過程を中心に
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26360054
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
山森 亮 同志社大学, 経済学部, 教授 (90325994)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 女性解放運動 / 英国 / 福祉権運動 / ベーシックインカム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、要求者組合運動と女性解放運動双方に関わった主に白人労働者階級の女性たちに聞き取り調査を行った他、彼女たちの証言を裏付ける資料を見つけるための資料調査を行った。その結果、1977年4月にロンドンで開かれた、全英女性解放会議において、ベーシックインカムを「全英女性解放運動」全体の要求とすることを求める動議が出され、賛成多数で可決されていたことを突き止めた。また1977年に先立つ同会議においても同じ動議が出され、可決されたものの、議長によって取り消されたとの証言をも得た。ただしこちらはこの聞き取りの内容を裏付ける資料は未だ確認できていない。 また、聞き取り調査の過程で、例えばイーストロンドンの要求者組合では、ベンガリ系住民の参加がみられたことが分かり、またベンガリ語で当時作成されたリーフレットなども発見することが出来た。インタビューに既に協力して頂いている女性たちのネットワークや、当該地区のベンガリ系団体を通じて、当時を知るベンガリ系の女性たちへのアクセスを試みているが、こちらは、現在のところ徒労に終わっている。 上記調査のうち、確認できた内容について、二つの学会で発表し、うち一つでは女性史の学術誌の特集号への寄稿を勧められ、他方では、最優秀論文賞を受賞した。後者の賞受諾の条件が、その学会誌への投稿であったため、それに従い、後に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
勤務先より頂いたサバティカルという貴重な機会を活かし、第一に、本研究を開始する前に、当該国でのオーラルヒストリーの進め方等について、トレーニングを受けたり、準備を十分に勧めることができたこと。第二に、同上の理由により、調査協力者、調査対象者と緊密に連絡をとりながら、調査を進めることができたこと。第三に、また同上の理由により、労働者階級の女性たちの強いアクセントを伴うインタビュー音源を文字化していくという、大変骨の折れる作業にも、調査協力者の支援も受けながら、十分に取り組む時間が持てたこと。第四に、幸いにして関連する学会で報告の機会を頂き、良いフィードバックを頂けたことなどが、おおむね順調に進展している理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
執筆した論文は、前述のように、良いフィードバックに恵まれ、この研究テーマについての招待講演の依頼もいくつか来るようになっている。ただしサバティカルが今年8月で修了し、その後英国で調査活動をする時間が限られてしまうことを踏まえ、8月までの英国滞在中は、可能な限りすでに了承を得ているインタビュー調査を遂行し、また今後の調査のためのネットワークを作ることを優先する方針でいる。
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Causes of Carryover |
年度内に予定していた調査の一部が、1)年度末の3月となり、科研費での処理が難しくなったこと、2)年度明けの4月となったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記2)については、今年度調査を実行し、使用する。上記1)分については、調査費用算定時より為替が変動して出費が嵩む分にあてることとなるだろう。
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