2014 Fiscal Year Research-status Report
熊本県南小国町黒川温泉における訪問客と受入側の意識のギャップについて
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26360076
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
能津 和雄 東海大学, 経営学部, 准教授 (90710856)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 黒川温泉 / 広域観光 / 九州 / 熊本県 / サステイナブル・ツーリズム / 需要と供給 |
Outline of Annual Research Achievements |
黒川温泉に関しては、これまで学術的に深く掘り下げた研究がなされておらず、特に歴史面では多くの学術論文が一般書籍である『黒川温泉「急成長」を読む』(熊本日日新聞情報文化センター)に依存する状況にあった。本書は地元住民への丹念な聞き取り調査によって書かれたものであるが、古文書の調査が不十分であり、詳細な調査が必要であるという判断となった。このため、本研究の最初の目標である「徹底した文献研究を行う」の方針の下、古文書の調査から行った。昭和末期に急に有名になった温泉地であったことと、熊本県立図書館・熊本市立図書館が同時に改修工事による長期休館になるというハンディキャップがあったものの、何度も増補改訂されてきた肥後国誌において、黒川温泉関連事項の正確な掲載時期が判明するという成果を得られた。さらに明治・大正期における黒川温泉関連の記述も次々と見つかったほか、戦後においても断片的ながら黒川温泉の状況についての情報を得ることができた。これらの成果は、2015年秋に出版予定の書籍において分担執筆で発表することが決まっており、現在編集作業が行われているところである。 また需要と供給のギャップを検討するうえで、広域観光に対する考え方の違いが影響しているのではないか、という仮説を立てるに至った。このことを証明するため、以前から自ら提供しているインターネットのウェブサイト「黒川温泉道場」へのトピックごとのアクセス数を解析し、その結果得られた周遊先の観光地である大分県由布市と宮崎県高千穂町の1ヵ月毎の宿泊者数をパーセンテージ化して黒川温泉と熊本県全体のデータと比較検討を行った。その結果、黒川温泉は熊本県全体よりも由布市との相関関係が強く、高千穂町の影響も徐々に強まっていることが判明した。2014年10月の東北地理学会にて発表した本成果は、今後のアンケート調査のための基礎資料として活用する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は徹底した文献研究を行ってからアンケート調査に進む予定であった。しかし、文献研究を行う上で古文書にあたる必要があり、その所在調査に予想以上の時間を要した。その上、文献が所蔵されていると考えられた熊本市立図書館と熊本県立図書館が同時に建物改修のために長期間休館したため、他の図書館等での資料収集を余儀なくされた。必要とされる文献についてはおおむね収集することができ、その成果については2015年5月に開催される日本温泉地域学会において招待講演による口頭発表や、2015年秋に出版予定の書籍で分担執筆での掲載により、公表することが既に決まっている。しかしながら、アンケート調査の準備に取り掛かることができなかったため、次年度に繰り越す結果となった。その理由として、アンケート調査を行う際には調査項目について実態との乖離を防ぐ観点から、事前にこれまでの研究成果を精査をする必要があるが、これについては既に着手しているものの、まだ完了していない状況にある。なお、集計に必要な機材やソフトウェアは初年度に購入できたので、次年度の当初から活用できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた研究成果を精査し、アンケート調査で必要な項目を慎重に検討する。また「黒川温泉道場」のデータのみで旅行者の志向を測定をすることは不十分であるため、インターネット上の複数のいわゆる「質問サイト」(「Yahoo!知恵袋」や「教えて!Goo」など)に投稿された質問と回答のデータをテキストマイニングの手法を活用して集計及び解析を行い、アンケートでの質問項目が回答者の旅行実態と乖離しないようにする。このようにしてアンケート項目を作成した後、できるだけ多くのサンプルを集めるよう、最低でも季節毎に、可能であれば毎月のペースでアンケート調査を行い、1次データの集積に全力を挙げる。また、外国人の観光客が少なくないため、英語・韓国語・中国語でのアンケートの作成も検討するとともに、アンケート項目の詳細にも外国人と日本人の嗜好の違いを反映できるよう考慮する。 また当初の予定通り、ロシアのモスクワ大学にて開催される国際地理学連合2015年モスクワ会議での口頭発表が決定した。ここでは「需要と供給」の関係にスポットを当てながら、これまでの成果をまとめた上で国際的な観点からのサステイナブル・ツーリズムのあり方を問うことを目的としている。これまでの研究の途中経過を発表することにより、国内外の研究者から得られる助言や批判を、今後の研究に反映させていきたい。
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Causes of Carryover |
他の予算(科研費以外の個人研究費等)から支出したことにより、旅費の支出が皆無となった。また当初予定していたアンケート調査を実施できなかったため、人件費の支出が皆無となった。以上の理由により次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、前年度に実施できなかったアンケート調査を今年度に実施することにより、その人件費に充当する予定である。
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Research Products
(4 results)