2016 Fiscal Year Research-status Report
持続可能な観光の実現に寄与する観光倫理の構築に向けた研究
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26360080
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Research Institution | Aichi Toho University |
Principal Investigator |
宮本 佳範 愛知東邦大学, 経営学部, 准教授 (60571304)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 観光倫理 / 観光者の責任 / 観光登山 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度から執筆していたこれまでの観光倫理研究の流れや方向性を示した展望論文の修正等を行い、学会誌にて発表した。また、昨年度調査を実施したベトナムのサパの主要な観光アトラクションの一つであるファン・シ・パン登山を取り上げ、観光の文脈で行われる登山の安全管理の主体などに関する考察を行った。具体的には、受け入れ体制の現状およびツアー登山参加者の性質などを踏まえれば、ツアー登山の安全対策としては、従来の登山とは異なる独自のリテラシーが観光者に求められるのではないかという結論にいたった。それらの研究のうち、ツアー登山全般の問題を再考する論文を完成させ、学会誌で発表した。現在は、ファン・シ・パン登山の事例研究に基づく論文を執筆中である。 また、観光倫理研究に関しては、ベトナムのサパにおける問題を解決する糸口を探るため、当初の計画通り、ブータンでの調査を実施した。ブータンでは、観光者と直接接する人々および政府観光局の方などにインタビューを実施した。サパでは観光者が自由に現地の民族と触れ合い、交流することができる。一方、ブータンでは、ガイドの同行が必須であったり、事前のスケジュール決定や公定料金制度が定められていたりするなど、自由な観光が制限されている。したがって、サパで生じるような観光者の行為の倫理的問題が生じにくいのではないかという視点から、両者を比較検討する計画であった。しかし、有益な知見は得られたものの、当初想定したような、単純比較が可能な内容ではなかった。したがって、今後は論点を修正しつつ、両者の観光システムの違いが及ぼす倫理的問題への影響などに関して考察していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では、1.観光倫理研究の範疇を整理するとともに、応用可能な理論的枠組みを明らかにする、2.観光地(主にエスニック・ツーリズムの対象となる地域)での観光者の行為について、その倫理的問題を明らかにする、3.観光倫理研究が計画通りに進まなかった場合の対応として、調査地域における観光者の行為の問題を明らかにする、という3つの側面から研究を行ってきた。 1.に関する研究は成果の公表を終えることができた。2.については、昨年度行ったベトナムでの調査で、現地で観光者と直接関わる人々が考える観光者の倫理的問題が、仮説とし想定していたものと必ずしも一致しなかった。したがって、本年度行ったブータンでの調査との比較に仕方、論点などを修正する必要性が生じた。当初の想定と異なるとはいえ、調査の結果は尊重すべきであり、かつ、今後の研究の方向性を考える上で有益な結果であったといえる。そういった状況も有り全体としての進捗状況に若干の遅れが生じている。現在は、論点等の修正を検討するとともに、3.に関する研究としてベトナムのツアー登山における観光者の問題等に関する研究も並行してすすめている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、ベトナムでの調査状況が当初の予想と若干異なっていたことを踏まえ、汎用的な倫理の確立より、当面はその前段階として、調査地における特定の観光状況における観光者の責任、行為の問題などを明らかにすることを目標とした研究を行っていく。その一環として、まず現在執筆中のファン・シ・パン登山における観光者の行為の問題に関する論文を完成させる。そのうえで、夏にベトナムのサパおよびエスニック・ツーリズムが古くから盛んであるタイのチェンマイへの追加調査を実施することを検討中である。また、これまでの調査結果を再検討し、論点の修正等を行ったうえで、可能であれば論文としてまとめる計画である。
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Causes of Carryover |
本年度は、1回の調査旅費が大きく、本年度の予算の大半を支出した。清算が完了したのが年の終わり頃であったため、その後残金を使うことなく、2943円分が未使用のまま年度を終えることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本残金は、次年度の助成金と合わせて、書籍の購入代金等として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)