2014 Fiscal Year Research-status Report
西洋古代の魂不滅説・滅亡説の論拠・含意に関する哲学的研究
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26370003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
荻原 理 東北大学, 文学研究科, 准教授 (00344630)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 哲学 / 国際研究者交流 / アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
魂および魂の不死性(・可滅性)をめぐる、特にプラトンによる思索を考察するための基本的視座がほぼ形成された。 それは一つには『パイドン』、『国家』などのテクストの読解を通してであるが、また特に、12月のジョヴァンニ・フェラーリ教授(カリフォルニア大学バークレイ校)との長時間にわたる研究打ち合わせから学んだところが大きかった。 さらには、学会での研究発表および意見交換も、今後の研究の方向を確立する上で貢献するところ大であった。とりわけ、慶應大学(日吉)にて4月に開催の国際学会「プラトンとレトリック」で「プラトン『法律』における説得」と題する英語発表を行ない、『法律』第10巻の、魂の死後の定め等に関わる「説得」の概念を解明、これが通常の意味での説得と大きく異なる点を指摘し、当該箇所の魂論的意義を解明した。また米国エモリ大学にて3月に開催の学会「プラトン的道徳実在論」で、「『ピレボス』と「主観的・客観的」の対比」と題する英語発表を行ない、『ピレボス』の議論を「主観的・客観的」という多義的概念を軸に考察、魂論の後期プラトン的展開に独自の仕方で切り込んだ。座古田豊編『自然観の変遷と人間の運命』(東北大学出版会)に、「天罰論をめぐって」と題する邦語論文を寄稿し、天罰論の背景にある神なり天なりへの信仰を共有せずに天罰論の「一定の意義」を説くことの浮薄さを指摘、無信仰の者が宗教的信念を扱う際の倫理を問題化した。『新プラトン主義研究』に「プラトンらと無限」と題する邦語論文(大会シンポジウムの提題をもとにしたもの)を掲載。プラトンの「無限」概念をアリストテレス、プロティノス、トマス、クザーヌスとの対比を通じて明らかにし、そのさい、無限の一つの場(つまり快苦の場)としての魂が問題化される場面を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予定していたシンポジウムは開催しなかったが、それは3月にアトランタの学会で研究発表を行なうことにしたためである。 アトランタのそれを含む、事前審査のある重要な国際学会(いずれも国際プラトン学会による)で2度英語の発表を行ない、高い評価を受けた。国内の査読付き雑誌で研究発表を行なった。他にも邦語の共著を刊行した。 フェラーリとの意見交換を通じて、今後の研究の方向が固まった。
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Strategy for Future Research Activity |
『パイドン』の魂不死論証(おそらくは最終論証)の意義の検討に進む。『ピレボス』の魂論の考察の重要性が明らかになってきたので、これにも力を注ぐ。 エピクロス派の魂可滅論の研究にも本格的に着手する。
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Causes of Carryover |
当初は海外および国内の研究者を数名招聘してのシンポジウムを計画していたが、3月に米国アトランタにて開催の学会で研究発表を行なうことにした。研究図書については、カタログ等の情報をもとに取り寄せた書籍をいざ手に取ってみると水準に不満であることが多く、図書選定の方法を検討し直すことにし、購入は次年度に回すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度、シンポジウム(または海外研究者を招聘しての講演会)を開催する。研究者仲間の情報を収集した上でのより有効な図書選定の方法にしたがい、本年度に購入する予定だった金額分の図書を積極的に選定・購入していく。
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