2014 Fiscal Year Research-status Report
同時代の受容と批判から再構成されるカントの超越論哲学
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26370009
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
城戸 淳 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (90323948)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カント / 批判 / 『純粋理性批判』 / 超越論的観念論 / 時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、同時代におけるさまざまなカント哲学の受容と批判を収集・整理し、それらに対する応答をカントの著作や遺稿などに跡づけることによって、同時代の思想的なコンテクストのなかで、『純粋理性批判』から『オプス・ポストゥムム』にいたるまでのカントの超越論哲学とその発展を再構成して解釈する試みである。 初年度となる平成26年度は、第一に、カントの教授就任論文『感性界と叡智界の形式と原理』に対する諸批判と応答を再構成することを課題とし、その成果の一部として、論文「時間と自我──カント超越論的感性論第七節における反論と応答」(東北大学哲学研究会編『思索』第47号,2014年)を発表した。この論文は、時間の絶対的実在性を否定した1770年の教授就任論文に対して寄せられたメンデルスゾーンやランベルトからの諸批判に対して、カントがいかに1781年の『純粋理性批判』第一版の超越論的感性論において応答・反批判したのかを考察して、さらにはファルケンスタインなどの近年の有力な諸解釈の再検討を試みたものである。 さらに第二には、『純粋理性批判』に対する経験論者からの批判を検討した。カントの超越論的観念論をバークリー式の観念論と断ずるゲッティゲン書評を皮切りに、カントの空間・時間論への異議、カテゴリーの導出とその客観的妥当性の問題、純粋主義への反発など、経験主義の陣営からは多岐にわたるカント批判が展開された。それらの批判の展開の経過を辿りつつ、『プロレゴメナ』から『純粋理性批判』第二版へのカントの批判哲学の形成を再構成することを試みた。その成果は、とりわけ観念論論駁の問題圏に焦点を合わせて、27年度中に公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度については、当初は1781年の『純粋理性批判』第一版に対する経験論者の批判から研究を開始する予定であった。しかし、第一版の『純粋理性批判』への形成をめぐる批判と応答を検討する必要があることが判明したため、さらに研究課題を拡張し、1770年の教授就任論文にさかのぼって着手することにした。その結果として、当初の研究課題に関していえば、いささか達成が遅れているといわざるをえない。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の研究計画にしたがって進行する予定である。平成27年度は、平成26年度から積み残した課題である経験論者からの批判について研究を続けつつ、さらには平成27年度の課題である合理論者から批判、とりわけエーバーハルトのカント批判とその応答に関する研究へと繋げる。なお平成27年度の前期は、ハレ大学(Martin-Luther-Universitaet Halle-Wittenberg)の哲学講座に客員研究員として滞在しており、当地のクレンメ教授(Prof. Dr. Heiner F. Klemme)とも緊密に連携しつつ研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
全額使用の予定であったが、年度末の調整に手間取り、わずかながら残額が出たものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額と併せて、旅費等として適切に使用する。
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