2015 Fiscal Year Research-status Report
同時代の受容と批判から再構成されるカントの超越論哲学
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26370009
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
城戸 淳 東北大学, 文学研究科, 准教授 (90323948)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カント / 『純粋理性批判』 / 批判 / 観念論論駁 / 統覚 / 自己意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、同時代におけるさまざまなカント哲学の受容と批判を収集・整理し、それらに対する応答をカントの著作や遺稿などに跡づけることによって、同時代の思想的なコンテクストのなかで、『純粋理性批判』から『オプス・ポストゥムム』にいたるまでのカントの超越論哲学とその発展を再構成して解釈する試みである。平成26年度は「経験論者からの批判──『純粋理性批判』第一版から『プロレゴメナ』、第二版へ」を研究課題としたが、つづく本年度の平成27年度では時代を進めて、「合理論者からの攻撃──『純粋理性批判』第二版と『エーバーハルト論駁』」に取り組んだ。 本年度は4月~9月まで、ドイツのハレ大学(マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク)にて、ハイナー・クレンメ教授のもとで客員研究員として活動した。ハレは18世紀のドイツ啓蒙のメッカであり、当時の古い資料を存分に活用しつつ、また当地に集う啓蒙研究の諸氏とも交流しつつ、有意義に哲学史的な研究に従事することができた。 研究の成果は、ひとつには「観念論論駁への途上で――カントの超越論的観念論をめぐる批判と応答」(『Νux(ニュクス)』第2号,2015年)として纏めた。これは『純粋理性批判』第二版の観念論論駁へといたるコンテクストを、当時のカント批判とそれに対するカントの応答として再構成する試みである。 また、『純粋理性批判』第二版の超越論的演繹論における自己意識論の問題設定とその哲学史的な背景を、第12回国際カント学会にて“Kant’s Synthetic Unity of Apperception and Its Rivals”として発表した。これは追って印刷物として刊行される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究はおよそ当初の計画に即して進んでいる。ただし半年間の海外長期出張もあり、研究成果の取り纏めにはいささか遅滞を来しており、次年度以降にさらなる進捗を期するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は「観念論論駁の問題圏──『純粋理性批判』第二版とその後の遺稿群」をテーマとして研究を進める。『純粋理性批判』第二版の「観念論論駁」の問題圏と、その後の遺稿群における観念論に対する論駁の試みを追跡することが課題となる。 またHenry E. Allison, Kant's Theory of Freedom, Cambridge University Press, 1990の邦訳も進めており、28年度中の刊行を目指して作業中である。 研究は、その成果を東京のカント研究会等で発表し、他の研究者の示唆も得つつ進める。研究成果の一部は夏に『思索』の論文として取りまとめる。
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Research Products
(3 results)