2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370010
|
Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
水本 正晴 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (70451458)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 認識論 / 実験哲学 / 言語学 / 対照言語学 / 文化人類学 / 文化心理学 / メタ哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本語の「知っている」と「分かっている」については、これまで主にその使用の語用論的な違いが研究されてきたが、意味論的な違いについての研究があっても認識論的に興味深い命題的知識に絞った研究は少なく、ましてやその経験的探究は行われて来なかった。他方、英米の認識論においては、知識についての議論や考察は、knowが当然のように前提され、言語的な差異についての考慮はなされて来なかった。研究代表者は、前年度までの調査で得られた「知っている」と「分かっている」の有意な違いをもとに、さらにそれを英語のknow のデータと比較することで、意外にも、日本語のknow に対応する語としては、「知っている」よりも「分かっている」の方が近いということを明らかにした。だが、「知っている」も知識述語である以上、これは世界の言語の知識述語が様々な知識概念を表している、という知識の多元主義を支持するデータとなった。 研究代表者は、これを論文('"Know” and Japanese Counterparts;“Shitte-iru” and “Wakatte-iru”')にまとめ、認識論における言語的多様性の含意についての他の論文とともに、ラトガース大学のスティッチ教授らと共同で論文集Epistemology for the Rest of the Worldにまとめた。研究代表者はそこで、筆頭編集者として、序論やマニフェストの執筆(マニフェストはスティッチ教授と共著)も行った。この論文集はこの度オックスフォード大学出版からの出版が決まった。 また、6月にはEthno-Epistemology Conferenceと題した国際会議をスティッチ教授やNY大学のJ・ガネリ教授らと金沢で開催し、世界の著名な認識論者、言語学者、社会心理学者、人類学者を交えた刺激的で活発な議論を行うことで、認識論への新たな貢献ができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以前より準備してきた論文集の出版が決まり、また28年度の国際会議に基づく新たな論文集の準備も順調に進んでいる。後者の論文集は、前者のものより内的な整合性や統一性がより取れていると言え、内容的にも論文の質が高いと期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
28年度の国際会議に基づく論文集の序論を他の編者と共同で書き上げ、出版へ向け準備を進める。その際、「交言語的食い違い(cross-linguistic disagreement)」という概念を中心にしてその観点から各論文を紹介していく。必要であれば、寄稿者でもあるThomas Grundmann 教授の意見を伺う。 その他認識論においては、現在すでに成果の出ているknow how の日英比較研究を中国語やその他の言語に拡大して一般的に研究する。 また、言語的多様性と食い違いの可能性の問題を認識論以外の分野にも広げ、例えばすでに結果が出ているKnobe効果と言語との関係の考察を、日本語と英語だけでなく中国語やその他の言語にも拡大して一般的に研究する。
|
Causes of Carryover |
国際会議後ラトガース大学でスティッチ教授とともに数か月の海外研究を予定していたが、スティッチ教授のサバティカルその他の事情により予定が合わなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に今年度の海外での学会への成果発表に充てる。
|
Research Products
(12 results)