2016 Fiscal Year Annual Research Report
On the Study of the relation between law and ethics of the Kant school and the contemporary thoughts
Project/Area Number |
26370016
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
舟場 保之 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (20379217)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 法と道徳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代の問題について積極的な発言を行うカール=オットー・アーペルとユルゲン・ハーバーマスの論争が、法と道徳の関係をどのように考えるか、ということに関する両者のカント解釈の相違に基づくことから、まずカントの時代におけるカント解釈を哲学史的に振り返ることから始めた。その際、ヴォルフガング・ケアスティングの研究に依拠して、いわゆるカント派の思想は絶対的演繹派、相対的演繹派、フォイエルバッハの考察、後期フィヒテの論考に分類することができ、それぞれの特徴を明らかにすることができた。なかでも、絶対的演繹派に分類することのできる初期フィヒテの論考と後期フィヒテの論考とを比較・検討することによって、当該問題の所在を明確にすることができ、この研究成果に基づいて、アーペルとハーバーマスの差異を考察することに役立てることができた。アーペルとハーバーマスの差異は、初期フィヒテと後期フィヒテの差異として考えることで、理路が見えやすくなったという面がないわけではない。いずれにせよ、こうして、哲学史研究をアクチュアルなパースペクティヴのもとでテーマ化し実りある結果を得ることが可能であることも示すことができた。 本研究を遂行するうえで、当該テーマに関心をもつ若手研究者たちを招くとともに、ドイツから著名な研究者を招き、研究会を運営・開催したことも、大きな成果と呼ぶことができる。これらの研究会を導きの糸として、研究者の国際的なネットワークを形成することができたとともに、当該テーマを今後も探究し続ける人材と場所が生み出されたと言えるからである。また、研究成果として欧文論文を3本執筆したほか、最終年度にはドイツ人たちとの共同研究会において口頭発表を行った。
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