2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370026
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
森岡 正博 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (80192780)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 人生の意味 / 人間の尊厳 / 生命倫理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一年目の研究のプロセスにおいて、申請者が編集長を務める国際学術誌Journal of Philosophy of Lifeの国際アドバイザーであるThaddeus Metz教授と共同研究を本格的に行なうことになり、その結果、「人間のいのちの尊厳」の問題を、「人生の意味meaning of life」の問題と接続して哲学的に考察するという課題が浮上した。これは当初想定していなかったものであるが、本研究の内発的展開として非常に有意義なものであった。二年目の研究の多くの精力は「尊厳」と「生の意味」の関係に注がれ、その成果として、一本の英語論文(査読あり)と、一本の編著を刊行することができた。英語論文"Is Meaning in Life Comparable? : From the Viewpoint of ‘The Heart of Meaning in Life'"では、「人生の意味の中核部分」という概念を提案し、人生の意味には比較可能な層と比較不可能な層があることを指摘した。そしてこの比較不可能な層が「尊厳」と関係を持つ。これは英語圏の分析哲学的人生の意味論に対する有効な批判となり得ると考える。また私が編者となって論文集"Reconsidering Meaning in Life: A Philosophical Dialogue with Thaddeus Metz"が刊行された。これはMetzの著作に対する批判論文を集めたものであり、人生の意味論の最先端の議論を集結させることができた。また、一年目に行なった生命倫理学と尊厳の研究を引き継ぐ形で二本の英語論文を刊行することができた。次年度に向けて、人生の意味論を、再度、生命倫理学と結合させて「尊厳」のテーマに迫っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「人間のいのちの尊厳」を哲学的に明らかにするという研究テーマを順調に進めることができている。本年度は「人生の意味」論との接続という、当初には想定していなかったテーマに取り組むこととなったが、研究の内発的展開として有意義なものになったと考えている。ヘイスティングスセンターへの海外調査研究を行なう予定であったが、諸般の事情により渡航先を変更し、バルセロナで開催された欧州日本哲学会にて研究発表を行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に研究を進めた「人生の意味」論について、今後はさらに多方面から検討を加え、それと「人間のいのちの尊厳」との関係性について哲学的に考察を加える予定である。その際に、ニーチェおよびヨーナスの生命哲学を補助線として考察することを考えている。そして「人間のいのちの尊厳」概念に迫るために、いわゆる「トロッコ問題」を取り上げ、そこにおいて死にゆくままにされ、また殺されていく人間のいのちの尊厳の視点から、トロッコ問題の設定それ自体を問い直す考察を行なう予定である。この問題はそもそもは中絶の是非から出現しており、生命倫理学における尊厳論と深い結びつきがある。また、共同研究者のMetz教授の招聘を企画しており、本研究の総まとめとして研究会・公開シンポジウム等を開きたいと考えている。また、海外の学術誌に英語論文を投稿するとともに、本研究の成果をまとめた学術書を商業出版すべく原稿を執筆する。
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Causes of Carryover |
適正に支出しようと試みたが、発注していた図書が期限内に届かず、支払うことができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の分については、翌年度に支払うこととする。翌年度は計画に沿って無駄なく支出する。
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