2016 Fiscal Year Annual Research Report
Nietzsche's Naturalism: Its process of formation and its theoretical range
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26370028
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| Research Institution | Morioka College |
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Principal Investigator |
齋藤 直樹 盛岡大学, 文学部, 教授 (90513664)
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2014-04-01 – 2017-03-31
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| Keywords | ニーチェ / 自然 / 歴史 / 自然主義 / アドルノ / 自然史 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度までの研究において論究されたいくつかの独特な自然概念（ルカーチ「第二の自然」・ベンヤミン「移ろいとしての自然」・アドルノ「自然史」等）とニーチェの「自然」概念とを比較検討することを通じて、初期ニーチェの「自然主義」の主要な関心が、自然と歴史との二元論的な対立を廃棄し、それらの双方が批判的に相対化されるような新たな＜自然／歴史＞概念を提示することにあったとの結論を得た。
さらに、そうした観点に基づきつつ考察の対象を後期思想圏に拡張することを通じて、「力への意志」を主題とした後期ニーチェ思想を「力への意志の形而上学」と見なす伝統的解釈が、「ディオニュソス的自然衝動」をめぐる初期思想を「根源的者の形而上学」と特徴づける従来の解釈と相似的な構造を有していることを指摘し、そのうえで、後期ニーチェの主要な関心が、存在と生成との二元論的な対立を廃棄し、それらの双方が批判的に相対化されるような＜存在／生成＞概念を提示することにこそあったとの見地を確立した。
「自然」概念に一貫して注目しつつ実施された本研究は、ニーチェ思想における「自然」概念の多義性を明確に分析すると共に、それらを自然／歴史をめぐる現代的な議論と対比することを通じて、彼独自の「自然主義」の全体像を描き出すという成果を収めた。この成果によって、「ディオニュソス的象徴としての自然」「自然と歴史のコンステラチオン」といったこれまで主題的に論究されることのなかった着想、ならびに、「力への意志の内的＝外的現象学」「生成の刻印を帯びた存在」「実在性の存在形式としての仮象」といった一見すると矛盾を含んだ諸概念を整合的に評価しうる、ニーチェ思想の新たな統一像が示された。と同時にそれは、単なる自然科学主義あるいは物理主義に収束しつつある現代の自然主義の潮流を、独特な視点から批判的に反省する手掛かりを与えるものと評価できよう。
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