2015 Fiscal Year Research-status Report
ガイウス学派におけるプラトン解釈およびその自然観の解体と再生
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26370029
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
金澤 修 学習院大学, 文学部, 講師 (60524296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 和男 学習院大学, 文学部, 准教授 (80383545)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アルビノス / 中期プラトン主義 / アプレイウス / アルキノオス / ディゲネス・ラエルティオス / ガイウス(ガイオス) / アリストテレス / 新プラトン主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
学会発表:研究代表者は2015年9月開催の「新プラトン主義協会第22回大会〔於中央大学〕」で『プロティノス・コロキウム、「VI-1(42)-VI-3(44)有るものの類について1-3」における数学対象の成立に関わる箇所を中心にして』という研究発表を行った。数学対象の重要性は、「自然」が展開するこの世界に対して、「イデア」世界で成立するとプラトン主義の中で了解されている限りで、本研究のテーマである「自然」に関わっており重要である。 研究論文:研究代表者は2016年3月に「アルビノス『エイサゴーゲー』に於ける「論理学的性格の対話篇」の位置付けを巡って―アルキノオス、ディオゲネス・ラエルティオスとの比較を通して」という論文を『新プラトン主義研究第15号』にて発表した。これは研究代表者が前年の新プラトン主義協会第21回大会で行った発表を改変したものであり、ガイウスの弟子アルビノスのプラトン作品の論理的な作品について、同時代の哲学史家と比較した上で、「アリストテレス全集」の編集方針の影響を検討したものである。 翻訳:研究代表者は2015年10月、12月にアリストテレス『動物誌』上下を岩波書店から共訳で出版し、下巻の解説を共同で執筆した。「自然」という同じ主題についてプラトン主義とは異なる側面から論じた同書を検討することは、本研究に重要な観点を提供した。 研究分担者は前年度に引き続いて本研究の核となるアプレイウスのFloridaの読解を行ったが、単なる読解ではなく、アプレイウスのプラトニズムをどう理解するかという具体的な観点に即して進められた。これはFletcher, R., Apuleius' Platonism: CUP, 2014に負うところもあるものの、研究分担者自身の洞察によるところが大である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)研究代表者が、「ガイウス」学派の記録を残した唯一の人物であるアルビノスのプラトン読解の方針について研究を行い、それを論文として発表できた点。研究代表者は中期プラトン主義者によるプラトン作品の読解の歴史を辿る中で、論理的性格の作品について、アルビノスの独自性を「アリストテレス全集」の「オルガノン」の位置付けの影響を受けているとする見解を支持してきた。前年度の発表も今回の論文も基本的にはこの見解を超えるものではない。しかしながら前年度の口頭発表を論文化するにあたり、そのような試みが単に「アリストテレス全集」の影響のみならず、プラトンの対話篇である『メノン』篇の読解とも深く関係していることが明らかとなった。前年度の研究を踏まえた上で、新たな成果が生み出された限りで、研究は概ね順調に進展していると言えよう。 2) 研究代表者がアリストテレス『動物誌』上下を岩波書店から共訳で出版し、下巻の解説の一部を執筆した点。同書は、本研究の課題と通じる「自然」という問題について論じていながら、プラトン主義とは非常に異なる見解を有している。同書を検討することで中期プラトン主義の自然観との相違点がより鮮明となった。これは上記で述べた、アリストテレス全集の影響を受けた点と比較する、中期プラトン主義の性格をより明らかとするといえる。 3) アプレイウスの著作の読解が順調に進展し、これまでの研究で主張されてきたものとは異なるアプレイウス像が浮かび上がってきた点。研究分担者はFloridaの読解を独自の観点から行っており、最も重要であり基本となるこの作業が着実に実行されている点も、本研究が進展している証拠である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は3ヶ年に渡るものであり、2016年度はその最終年に当たる。これについて、個別的観点、および研究全体の観点を交えて記すならば以下の通りである。 1) 研究代表者は、2016年度、大阪大学で行われる「日本西洋古典学会」に於いて、中期プラトン主義に関連するパピルス片についての研究を口頭発表する予定である。このパピルス片は、プラトン主義とアリストテレス主義の混交状況を示すものであり、プラトン主義の「自然観」の解体と再生という本研究の中心的課題と密接な関係がある。 2) 2016年にブラジルで開催される、第21回国際プラトン学会に参加し、海外のプラトン研究者、プラトン主義研究者と、本研究の課題を中心にして意見交換を行う予定である。これは近年、議論が活発となっている、中期プラトン主義とアリストテレス・ペリパトス主義の影響関係を実際に検討する良い機会となると思われる。 3) 2016年度末に本研究を締めくくる意味で、本研究に関連する国内の研究者に呼びかけて研究会を行う予定である。これは上記、国際学科での意見交換とは場面が異なるものの、海外に比較すれば研究者が少ない、本研究課題に関連する領域の専門家による活発な意見交換の場となることが予想される。それをもって本研究のテーマである「中期プラトン主義者・ガイウスに発した、「ガイウス学派」によるプラトン理解」は、より深まると考えられる。
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Causes of Carryover |
数度にわたる学会および研究会等への出席および口頭発表を予定していたため、出張費等への支出を予定していたが、それらの全てが研究代表者および研究分担者が居住している関東圏で開催されたために、旅費等の関連経費を計上する必要がなくなったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度にブラジルで開催される学会への旅費と関連経費へ算入する予定である。ブラジルは近接した時期にオリンピックが行われるため、予算を多めに確保しておく必要があると考えている。
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