2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370031
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森 一郎 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (00230061)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 世界への愛 / アーレント / 活動的生 / 日本翻訳文化賞 / ハイデガー |
Outline of Annual Research Achievements |
「世界への愛をめぐる現象学的研究」の二年目にあたる2015年度は、実り多い一年であった。2015年6月、みすず書房から刊行した単独訳書のハンナ・アーレント『活動的生』は、読書界に好意的に迎えられ、2016年3月には第4刷に達した。2015年10月、日本翻訳家協会の第52回日本翻訳文化賞を受賞したことは、光栄であった。アーレントのこの哲学的主著ドイツ語版の本邦初の完訳を記念して、2015年11月から16年2月にかけて東京ドイツ文化センターで、『活動的生』入門の4回連続講座を担当し、毎回100名を超える一般市民に熱心に聴講いただいた。 この訳業と連動して、現代日本のアーレント研究を牽引する活動を行なった。2015年8月にはアーレント研究会のシンポジウムに登壇、仙台では年二回のペースで「アーレントの夕べ(ハンナ・アーベント)」を開催、2016年2月には城西大学で、『活動的生』入門の公開講演を行なった。16年3月刊の『理想』アリストテレス特集号には、アーレントのアリストテレス受容に関する画期的研究を掲載した。 その他、研究成果の公開も盛んに行なった。ハイデガー・フォーラムの電子ジャーナルHeidegger-Forumと、哲学会の伝統ある『哲学雑誌』に、それぞれ論文を掲載した。齋藤元紀編『連続講義 現代日本の四つの危機』(講談社新書メチエ)と、トラヴニー・中田・齋藤編『ハイデガー哲学は反ユダヤ主義か』(水声社)を分担執筆した。 このようにさまざまな機会に、世界への愛に関するオリジナルな思索を展開してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
十年越しの課題であったアーレント『活動的生』の翻訳を完成できた。もう一つの翻訳プロジェクトであるニーチェ『愉しい学問』(講談社学術文庫)も校正段階に来ている。『続・ハイデガー読本』(法政大学出版局)も、当初の予定通り、2016年4月に公刊される見込み。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は、まず共編著『続・ハイデガー読本』を世に問う。これは、2014年11月に出して好評を博した『ハイデガー読本』の続編であり、ハイデガー・フォーラムを機縁としたに連帯した研究者の総力を結集したプロジェクトが、ひとまず完結を迎える。次に、講談社学術文庫の古典新訳シリーズとして、ニーチェ『愉しい学問』を、年度半ばまでには出版する。今年度後半は、2018年度開講予定の放送大学担当授業用の印刷教材『現代の危機と哲学』の執筆を中心に据えて、引き続き「世界への愛」についての原理的探究を前進させていく。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通り使用した。端数の残額は51円。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品として使用する。
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