2016 Fiscal Year Annual Research Report
Contemporary significance of the anti-contemporary views in Hans Jonas' philosophy
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26370038
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
品川 哲彦 関西大学, 文学部, 教授 (90226134)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 倫理学 / 哲学 / 宗教学 / 未来世代 / 責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主題であるヨナスの哲学的経歴は、(1)グノーシス思想研究、そしてパレスチナへの移住と第二次世界大戦、第一次中東戦争に従軍して学究生活を離れた期間を経て、(2)目的論的自然観にもとづく生命哲学、(3)生命倫理学への提言、(4)地球規模での環境危機に抗して未来に人類が存続可能にする現在世代の責任を説く責任原理、(5)ホロコースト以後に神を考えうる神学的思索というふうに多面に分かれている。本研究はこれらを貫く、超越を論じる形而上学的傾向を反時代的見解として捉え、しかしそこに時代的意義を見出そうとしてきた。研究代表者はすでに(2)~(5)について研究成果を公表してきた。最後に残ったのが彼の研究の出発点である(1)である。(1)へと彼を促したのが師ハイデガーの実存哲学であり、 (2)以後の転回を強いたのはハイデガーのナチスへの加担を阻みえなかった実存哲学への疑念である。それゆえ、(1)と(2)以下との連続性は明らかでない。本研究の最終年度には、2017年3月のドイツ出張によってケルン市図書館のGermania Judaica(ユダヤ関係ドイツ語文書コレクション)において(1)を開始する以前のヨナスが関わったシオニズム学生運動について(それに関連する資料は多くない)新たな知見を得ることができ、同じ運動に関わったユダヤ神秘主義の研究者となるショーレムやハイデガーの下でともに学んだレオ・シュトラウスも含めて当時のユダヤ人学生の動向を知ることができた。ハイデガーからの離反を考えるための傍証的考察として、ハイデガーとナチスとの関係は本研究の範囲に入る。2016年5月に第75回日本哲学会大会シンポジウム「哲学の政治責任――ハイデガーと京都学派」の3名の提題者のひとりとして「存在の政治と絶対無の政治」を発表し、『哲学』67号に掲載、大会時の発言を加筆した増補版を『倫理学論究』に掲載した。
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