2015 Fiscal Year Research-status Report
解釈学の展開と創造性―ディルタイの基礎概念〈現象・構造・理解〉に基づいて
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26370039
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
山本 幾生 関西大学, 文学部, 教授 (00220450)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ディルタイ / 解釈学 / ミッシュ / 解釈学的論理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ディルタイを出発点にして20世紀に展開した解釈学を、出発点に戻って吟味することによって、解釈学の新たな展開を提示することを目的としている。 この目的を本研究は3年計画で達成するために、2年目の本年は、申請の計画書にしたがって、ディルタイ以降の20世紀の解釈学の展開の解明を目標にしてきた。すなわち、ディルタイ以降の解釈学の展開を、ハイデガーからガダマー、そしてリクールヘむけて、解釈の地盤となる事実性と、それに基づく創造性という二つの観点から跡付けた。そしてこの解明に加えて本研究は、これとは「別の路線」(ボルノー)を解釈学の新たな展開の可能性として掘り起こすことを試みた。 「別の路線」とは、ディルタイからゲオルク・ミッシュ、そしてヨゼフ・ケーニヒおよびハンス・リップスへ連なる「ゲッティンゲン学派」あるいは「解釈学的論理学」(ボルノー)とも呼ばれる路線である。ゲオルク・ミッシュは、ディルタイ全集第五巻「編者緒言」で著名ではあるが、その哲学内容、そして20世紀初頭(1929/30年)に起こした現象学(ハイデガーおよびフッサール)との「対決」は、日本ではほとんど解明されておらず、ドイツにおいてもボルノーによって紹介されてきた程度である。そして『ディルタイ年報』の11号(1997/8年)および12号(1999/2000年)に至ってようやく特集が組まれた段階である。これを受けて本研究は、現象学的分析に基づくハイデガーの「現存在の解釈学」への道筋だけでなく、ミッシュの「究め難きものの語り」の解釈学への道筋を掘り起こすことによって、解釈学の新たな展開の可能性を探った。 以上は、本科研費によって運営しているディルタイ・テキスト研究会の開催(2ヶ月に一回、計6回)を通して遂行し、その成果は学会発表および学術論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」に示す通り、申請時の計画に従って、本年度の目標は達成され、最終目標の「解釈学の新たな展開の提示」についても、出発点となるディルタイからハイデガーそしてガダマーへの展開と同時に、ディルタイからミッシュへの展開を掘り起こすことによって、一定の見通しが得られた。 また、本研究費によって運営している研究会も申請時の計画通り2ヶ月に1回の割合で開催し、その成果も発表および論文として公表している。 以上により、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は3年計画であり、来年度が研究最終年度になるが、これまで順調に進展しており、来年度も申請時の計画に従って研究を推進していく。 まず、研究室内のテキスト読解に関しては、ハイデガーからガダマーを経てリクールヘの路線において「テキスト空間」の創造性を主眼点に、そしてこれに加えてミッシュからケーニヒそしてリップスの路線において「究め難きものの語り」のもつ創造性を主眼点に、テキストの意味解明を行う。ミッシュ、ケーニヒ、そしてリップスのテキストは、今日、入手困難なものがあるが、研究会等をとおして、今年度中に、主要著作は揃えることができた。 また、研究室外にあっては、ディルタイ・テキスト研究会を継続的に開催し、テキスト読解の意味解明を本研究会で公表することによって批判・評価を受け、それをまた本研究に反映していく。かくして本研究の最終目標である解釈学の創造性を、過去から未来への歴史的社会的現実の連関を創造的に形成する解釈学として展開しうることを解明する。
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Research Products
(6 results)